仮想劇場『亡霊を見る日々』
- カテゴリ: 自作小説
- 2022/05/31 17:49:45
誰も居ないはずの部屋の片隅に腰を落とし、斜めに切れた白い天井を眺めて過ごしている。今は人の世を離れたばかりで顔が馴染まない。 雑踏を振り切ったおかげで確かに空気は澱まない。しかしそれを清々しいとはまだ言えない現状だ。
自己防衛のために殴り散らすしかなかったあの情景の、ズタズタに裂かれた断片が天...
誰も居ないはずの部屋の片隅に腰を落とし、斜めに切れた白い天井を眺めて過ごしている。今は人の世を離れたばかりで顔が馴染まない。 雑踏を振り切ったおかげで確かに空気は澱まない。しかしそれを清々しいとはまだ言えない現状だ。
自己防衛のために殴り散らすしかなかったあの情景の、ズタズタに裂かれた断片が天...
たとえば、信じていた大事な大事な人に心無い言葉を浴びせられたとして、その日を境にその人の事を疑ってしまうようになったのなら、僕はトコトンその人を疑うようにしている。 そのほうが無理に自分を諫めるよりはずっと素直だと思うし、何よりその人の事をもっと深く知れる機会になるだろう。結果的にその大切な人を...
夕間暮れの空の下で一人佇む幸せがあるように、絶え間ない雑踏の中にあって誰彼構わず愛想を振りまく幸せだってあっていい。 ああじゃなきゃいけないだとか、こうじゃなきゃダメだとか決めつける前に、一度だけ自分をその場所に放り棄てて心の在り場所だけでも掴んでみようと試みてはどうだろうか。
孤独を恐れる人...
「いい塩梅で年を治めて今日を迎えた事を切にありがたく思うよ」 キミはそう言って窓辺に立つと喫茶店の下を疎らに歩く人々を優しい目で見下した。【自分は特別だ】とか【無能は不要だ】とかいったイタい言葉をすぐ口にするキミにしては、やけに殊勝な呟きだなと思って僕は思わず天井を見上げフと笑った。
2022...
小さく息を吐きながら彼女の訪問をただ待つ。 時計の秒針がキリキリと油の抜けた音を刻んでいる。 呼び出しのベルは鳴らせない。それでも通知は常にONだ。
僕にかけられた制限は僕自身の罪が作り出したもの。 そこに異論を唱えるほうが不自然だから黙ってそれに従っている。 人生の大半を不自由の中で果敢に過...