【『侵されざる者(ダイアモンド)』】(承前-5)
- カテゴリ: 自作小説
- 2009/04/15 02:32:38
《姫》と彼女が内心で呼ぶことにしたその女性は、とてつもなく我慢強かった。
かなりの痛みを伴う検査にも眉一つ動かさずに応じて見せたし、検査機器に長時間拘束されても当たり前のように文句を言わなかった。
少なくとも、自分の個室の外では。
「我慢強いのは結構ですが、痛みで気を失う前に、ご自...
ぶろぐ、の、ようなもの。
《姫》と彼女が内心で呼ぶことにしたその女性は、とてつもなく我慢強かった。
かなりの痛みを伴う検査にも眉一つ動かさずに応じて見せたし、検査機器に長時間拘束されても当たり前のように文句を言わなかった。
少なくとも、自分の個室の外では。
「我慢強いのは結構ですが、痛みで気を失う前に、ご自...
「いったいどういった素性のお嬢様なんですか、あの方は!」
同居生活二日目で、早くも音を上げそうになった彼女は、同居人を検査室に送り届けたその足で、所長室に乗り込んだ。
「どうって…それは極秘事項だって説明したはずだけど?」
「それにしたって…彼女が今までどんな暮らしをしていたか、ぐらい...
彼女が、そのプロジェクトに関わることになったのは……
最初は、ただの業務の一環だった。
製薬会社に一般事務として入社した彼女は、学校こそ理系の大学だったが、成績は芳しいものではなかった。当然のことながら、配属された業務も、備品の管理や実験動物の世話などの「雑用」だった。だから、「業務」...
少女は、リュックを胸に抱えるようにしながら、中を探り、分厚いファイルを取り出した。「お母さん」と呼ばれた女性が、それを受け取り、中を開いた。色あせたインデックスに書かれた記号を、慎重に読んで行く。
やがて、
「そうね。これは違うわね」
そう言うと、ファイルを閉じて、傍らに置く。
「...
「「天使」に「聖母」?自分たちの事を何様だと思っていたやら」
ファイルをつかみ上げた小さな手の持ち主がそうつぶやく。
ペンライトが揺れて、辺りの瓦礫の山を照らす。時折、止まってはまた大きく振れる。しばらくあたりをさまよった後、小さな音を立てて、明かりが消える。
瓦礫の隙間からはいる薄明...