Nicotto Town


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日日是悪日

「evergreen」

 もうそろそろでしょうか。 朝藤が、開け放たれた窓の向こうを見遣りながら尋ねる。視線の先、裏庭では青々とした梢が薫風に揺れている。今日も今日とて気持ちの良い日和だ。 朝藤は珍しく、他の患者なら忌む窓際のベッドを希望した。窓際で寝食をしようものなら、嫌でも眼下に広がる林が目に付くが、入院した者は大抵こ...

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「退化の海」

 昔、確かにわれわれは魚だったのだと思う。



 青い光が茫々と乱反射する四角い枠は、スリープモードのパソコンのようだ。無論、ようだと言っているのだから私が差し向かうのはパソコンではない。真っ青な状態こそ稼働中の証である水槽だ。当然、目の前を横切るのはカーソルではなく魚影になる。 職員用の裏口から...

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「遥か遠く秘密の青」

 まるで、祝福するかのように晴れ渡った空でした。
 とある五月の朝、王と妃の間に待望の子供が生まれました。結婚してから長い間子供に恵まれなかった二人はもちろん、姫君の誕生に国中がこぞって祝杯をあげ、このめでたい日に民も鳥もラッパも大砲も朝から晩まで喜びの歌を高らかに歌いました。 たっぷりの愛情を注が...

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「桜葬」2/2

 墓参りを終え帰路につく。何人かに挨拶や報告を済ましたが、頭の中は先ほどの女性の残像でいっぱいで上の空は否めず、土の下の彼らには申し訳ないことをしたかもしれない。 あの時、僕がフェイスガードの内側で目をギョッとさせるだけだったのに対し、祈織は俊敏にあの人の元に駆け寄った。「どうしたんですか?」 今思...

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「桜葬」1/2

「死ぬんだったら今日みたいな日がいい」 頭上で咲き誇る桜を見上げ、少し前を歩いていた祈織(いのり)が呟く。防護マスク越しの声はくぐもり正確な内情はうかがい知れない。口ほどに物を言うという目も、陽光を反射する透明な保護面に覆われ、結局どんな顔をして希死念慮を言葉にしたのか分からずじまいだった。 僕達人...

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