Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー131

編集長と別れた犬飼はさっきと同じ経路でもう一度、厨房の勝手口から外に忍び出ていた。「奴さん、余計な回り道をさせやがって・・・」犬飼は苦笑した。編集長の事だ、他人の撮った写真ではなく自分の目でも現場を見たくなったのだろうが、おかげで犬飼は危ない橋を無駄に2回渡る事になったのだ。相変わらず人気のない庭を...

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刻の流れー130

「皆様、次の間でショーが始まりますので、どうぞ」大広間にアナウンスがあり、倶楽部の客達はコンパニオンと黒服達に促されてぞろぞろと隣の広間に移動していた。「どのような、ショーかな、これは楽しみというものだ」黒服に案内されて3階の大広間に足を踏み入れた編集長は、そういいながら、うまい具合に他の客たちに紛...

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刻の流れー129

支配人の部屋を出た犬飼は、エレベーターで3階まで戻り、大広間に繋がる細い廊下を小走りに移動していた。犬飼は、来た道を逆にたどるつもりでいるのだ。大広間を横切って、サーバー用のエレベータで厨房に戻る。通用口から外に出たら、絵を回収しなければならない。「時間は・・・・」零時15分前。編集長との約束まで1...

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刻の流れー128

午後8時から午前2時の間、従業員用の通用門を通る人間はほとんどいない。鉄格子の門は塀と同じ高さで2メートル以上あるし、錠もしっかり下ろされる。監視カメラがあり、映像は建物内の警備統制室でチェックしている。警備員がいる必要はないようだが、そうはいかないもので、この詰め所配属になった警備員にとっては孤独...

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刻の流れー127

紐育倶楽部の正門から少し坂を下ったことろにある公衆電話の陰で編集長がタバコに火をつけた。一瞬ライターの火で顔が浮かび上がり、すぐに消えてあとに赤い穂先が小さくゆらめいている。左手を上げて夜光時計を見る。11時44分。「そろそろ打ち合わせの時間だが・・・」そう呟いてもう一度深くタバコを吸い込む。編集長...

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