自作小説倶楽部7月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/07/31 22:55:08
『助け舟』
「見てごらん」
姉がしなやかな仕草で指差した地面を少女は見つめた。そこには無数の黒い生き物たちが忙しく動き回っている。
「何をしているの? この虫たちは」
「土や砂粒を運んで自分たちの町を作り、必要なものを運んでいるのよ」
姉の言葉で無数の中の一匹一匹に注目してみるとある...
『助け舟』
「見てごらん」
姉がしなやかな仕草で指差した地面を少女は見つめた。そこには無数の黒い生き物たちが忙しく動き回っている。
「何をしているの? この虫たちは」
「土や砂粒を運んで自分たちの町を作り、必要なものを運んでいるのよ」
姉の言葉で無数の中の一匹一匹に注目してみるとある...
『二つの殺意』
紅実〈くみ〉のことをどう思うか? 嫌な女よ。あんな女が双子の妹なんて、人生ついてないって本当に思うわ。子供の頃から自分に都合が悪いとすぐに泣くの。弱々しく母にすり寄って。生まれつきの才能ね。大人になるにつれて男にその手を使うようになったわ。ピンクの口紅に長い髪をカー...
『5人分で無限の夢』
5人の幼なじみが揃うと自然と思い出話で盛り上がった。
「親父には参ったよ。小学校に上がる前から〈儂の跡を継いで政治家になれ〉って、耳にタコが出来るほど言われた」
胸にキラリとバッジを光らせてSが言った。
「僕なんて学校でもやらないような難問を解けるまで許して貰...
『世界はウソで回っている』後編
4日目の夕方
家に帰る途中の公衆電話の前でミユキと出くわした。
「携帯つながりにくくて不便だろ」
「全然、連絡取る友達もいないの」
「ずっとここに住むつもり?」
「子供を育てられればどこでもいいわ。ここは食費はかからないみたいね」
ミユキが見せたビニール袋は村人からも...
『世界はウソで回っている』前編
最初の日の夜
神隠しに遭った兄貴が20年ぶりに帰って来た。
「まだお前がいるとは思わなかった。空き家で野宿よりずっとましか」
「一度外で就職したけど、戻って来たんだ」
僕の言葉を聞く素振りも無く兄貴は台所にあった焼酎をぐひぐひ飲み干し、梅酒にまで手を出すと着替えもせず...