自作小説倶楽部3月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2024/03/31 20:46:01
『マリア』
マリアは私のあこがれでした。蜂蜜色の髪に瑠璃色の瞳、そして白い肌。彼女とお茶をすれば狭い畳の間も豪華な宮殿になったり、おしゃれな邸宅になりました。私とマリアは花びらのお茶を飲み、おしゃべりをして、時々絵本を読みました。一番楽しかったのはマリアの衣装合わせです。古い型だったけどマリアはたく...
『マリア』
マリアは私のあこがれでした。蜂蜜色の髪に瑠璃色の瞳、そして白い肌。彼女とお茶をすれば狭い畳の間も豪華な宮殿になったり、おしゃれな邸宅になりました。私とマリアは花びらのお茶を飲み、おしゃべりをして、時々絵本を読みました。一番楽しかったのはマリアの衣装合わせです。古い型だったけどマリアはたく...
『疑惑の手紙』
うつくしい思い出はまだ貴男の中にあるのでしょうか。そばにいられなくても貴男の血のつながった娘さえいてくれれば幸せだとおもい生きてきました。しかし私の命はついに死病に侵され春を見ることなくつきることになりそうです。心残りは娘のことです。いとしい娘はまだ子供です。かつての私のように世間の...
『暗い道の先』
その店はまるで街の影の中に存在しているかのようだった。出張の帰路、列車は突然、通過予定だった駅に停まって動かなくなった。車掌の声で運転再開の見込みがないことを理解すると乗客たちは各々席を立ち開けっ放しの扉から列車を降りた。幸い、そこには大きな街があった。人の群れから離れて、私は明るい...
『山小屋の事件』
泥沼をもがき、やっと浮かび上がったように目が覚める。男が重い瞼を開けると目の前に暗闇が迫っていた。小さくなった炎に気付き、慌てて手さぐりで木片を掴むと火に投げ込み、それから己が寝ていた床に手を這わせるとすぐに冷たい金属製の懐中電灯を掴むことが出来た。スイッチを入れかけたが囲炉裏で再...
『女王の微笑み』
勝負に勝つにはね。何の勝負でもそうだけど対戦相手をよく知ることだ。例えば、あそこのテーブルでカードを睨んでいる若い男は鉱山主の孫だ。息子に先立たれた鉱山主の爺さんは孫息子を溺愛した。そして成長した奴が不良と付き合っても放蕩を重ねても、哀れな爺さんは奴に金を渡し続けた。とてもそうは見...
|