限りなく続く音(7)
- カテゴリ: 自作小説
- 2026/05/31 16:33:05
真夜中、私は足音を忍ばせて草太の部屋へ向かった。寝付けなかったのだ。草太も同じようで、明かりを消した部屋で目を開けていた草太は、障子のはめ込みガラス越しに私を見つけると布団の上に起き上がった。私は無言で障子を開け、畳の上を這って草太の枕元に座った。「何しに来たんだよ」「出た?おじいちゃんの幽霊」 ...
真夜中、私は足音を忍ばせて草太の部屋へ向かった。寝付けなかったのだ。草太も同じようで、明かりを消した部屋で目を開けていた草太は、障子のはめ込みガラス越しに私を見つけると布団の上に起き上がった。私は無言で障子を開け、畳の上を這って草太の枕元に座った。「何しに来たんだよ」「出た?おじいちゃんの幽霊」 ...
息を切らし汗を流して登った山の林を抜けると視界がひらけた。どこまでも広がる空と海ばかりがそこにあった。見下ろせば漁をする船が波に揺られている。トンネルでくぐった山を隔てた所にある小さな漁港から沖に出た船だ。私たちは手をつないだまま、岬の突端に立って崖下を覗き込んだ。「危ないよ草太」「うん。だいじょ...
翌朝、寝坊したのは草太の方だった。顔を洗って居間へ行くと、母が台所から「草太君を起こしてきて」と言った。私は廊下を引き返して家の端から端までぐるりと廻った。障子のガラスの向こうに、草太が布団から片脚を斜めに出して、大の字で寝ているのが見えた。私は障子を開けずに、腰を落としてガラス越しに「草太、草太...
夕飯の後片付けを済ませて、私は客間の草太を訪ねた。障子のはめ込みガラス越しに、草太が畳の上に寝転がっているのが見えた。私は障子の桟を軽くぽんぽんと叩いて「草太」と声をかけた。草太は「何?」と答えるだけで、寝転んだままだ。私は障子を開けて部屋に入り、草太の横に座った。「お風呂。先に入っていいよ」「う...
泳ぎ疲れてぐっすり眠った昼寝の後、夕飯までの時間に宿題をしていると草太があれこれと話しかけて邪魔をする。「話しかけないでよ」と言うと、草太は部屋にあった大きなパンダのぬいぐるみを相手にプロレスを始めた。「うるさいなあ、もう、あっち行ってよ」「あっちってどっち」「自分の部屋」「やだよ、何にもないんだ...