仮想劇場『clouded moon』
- カテゴリ: 自作小説
- 2023/07/23 21:22:23
あの夜、空は突然モノクロームになって、僕の眼球から色彩の全てを奪ってしまった。それを境にあらゆる権利を剥奪され、この星の住人であることさえ赦されなくなる。
昨日まで同じスローガンを抱いて酌み交わした友も、今ではすっかり他人様となりはて、住み慣れたあの家も今ではもう知らない誰かの宿り木。
それ...
あの夜、空は突然モノクロームになって、僕の眼球から色彩の全てを奪ってしまった。それを境にあらゆる権利を剥奪され、この星の住人であることさえ赦されなくなる。
昨日まで同じスローガンを抱いて酌み交わした友も、今ではすっかり他人様となりはて、住み慣れたあの家も今ではもう知らない誰かの宿り木。
それ...
地べたに描かれた大きなふたつの赤い丸は勝利を確信したときの君なりのVサイン。すでに廃校になった繁華街内の中学校の校庭、そこに今更ながらにハッキリとわかりやすくスプレーされている。相変わらずの君のハッタリに僕はニタリとしたり顔。いつの時代でも君はやっぱり面白いやつだ。
あの日、あの時、僕が勝者に...
夜目川の河川敷を昨日の夕暮に旧知の友と二人で歩いた。実に30年ぶりの事だ。互いにあまり多くを語らなかったが、君の今がどういう状況であるのかはなんとなく察知できた。
夜目川はちょうど河川工事の最中のようで大型のダンプカーが2台、土手の上を土煙を上げながらこちらに向かい、そして僕らのスレスレをす...
ネットでみかけた誰かのヒネくれた主張に「くだらないね」って君がつぶやいたら、「お前は生意気だ」って知らない人が速攻で返してきて、そこからもう引けなくなって君は当たり散らすように誰彼構わず噛みついて回っている。それからはただただ不毛な水掛け論。答えなんて一個も見つからない。
僕はといえばそっぽを...
「きれいな花だっていつかは必ず散るんだもの」と彼女が言った。秋晴れの透き通る風とちょっとだけ汗ばんだ午後のことだ。 僕は表面の溶けかけたアイスを齧りながらそんな彼女の強がりを見つめていた。「もういちど蕾に戻れたらいいね。冬眠するみたいにさ」 僕らの青春は時代の流れの中で重たく花開き、そして当たり前...