Nicotto Town


しだれ桜❧


 

刻の流れー136

門前のトラック事故の報告が倶楽部から神戸の田中に届いたのは夜も白々明けの頃だった。さすがに、紐育クラブ自体の騒ぎは収まってはいたが、間の悪い事に、田中の元には客からの苦情の方が昨夜のうちに届いていた。 
「どうもこうもない! 馬鹿もんがぁ・・・」 
電話口の向こうで怒鳴られている...

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刻の流れー135

東横線の妙蓮寺の歴史は古い。現在の横浜市神奈川区神明町に1350年(観応9年)、波木井善太郎が日輪を開山上人として、この寺院の前身の一つである妙仙寺を開いたといわれる。1908年(明治41年)妙仙寺が横浜鉄道臨港線(現:JR横浜線)敷設のため、移転を余儀なくされ、当時の住職・日體は菊名池畔にあった蓮...

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刻の流れー134

「内田 ひろみは今朝、新神戸駅からひかりに乗せた」 
10時きっかりにかかってきた電話で、開口一番『3110』が言った。これには、犬飼のほうが逆に驚いた。「絵の確認をしなくてもいいのかい?」 と、言う始末だ。『3110』はくくっと笑った。 「今、手元に持っていらっしゃる...

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刻の流れー133

犬飼は胸を締め付けられる夢を見ていた。目の前に、高さ5mはあるコンクリートの塀が聳え立っている。犬飼は入り口を求めて、塀に沿って歩き出した。行けども行けども入り口はおろか、曲がり角さえ見つからない。高い塀だけが延々と続いている。「早く、助けて・・・」塀の向こうからひろみのうめき声が聞こえてきた。この...

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刻の流れー132

編集長が出版社に戻ったのは次の朝9時をかなり回っていた。
「長い夜だった・・・」
と伸びをする。
ふと見ると、デスクに小さなメモがおいてあった。
『機材、借りました』
とだけ書かれている。どうやら、犬飼がフィルムの現像、焼付けをやっていったらしい。
「勝手知ったるなんとかか・・・」
編集長は、受話器...

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