「クラウディア、と申します。名の他の部分については、ご寛恕願います」
「…他の部分?」
「婚約者様」が怪訝そうに尋ねる。
「ああ、魔法使いの習慣でね。名のすべては明かさないんだ。力のある魔法使いだと、名前のすべてを知る事ができれば、相手が支配できるんだそうだ」
「それは&hellip...
ぶろぐ、の、ようなもの。
「クラウディア、と申します。名の他の部分については、ご寛恕願います」
「…他の部分?」
「婚約者様」が怪訝そうに尋ねる。
「ああ、魔法使いの習慣でね。名のすべては明かさないんだ。力のある魔法使いだと、名前のすべてを知る事ができれば、相手が支配できるんだそうだ」
「それは&hellip...
「わたくしを、連れて逃げていただきますか?」
いかにも儚げな佳人に、切羽詰まった様子で上目づかいにそう言われたら、思わず「はい」と即答してしまうだろう。男ならば。即答しないまでも、考えるそぶりくらいは見せるのではないかと思う。
だから、私の取った反応――それまで行っていた花柄摘みの作業を止め、脚...
クリスが言葉を濁していたのは、この事、だったのか?…
おそらくは、そうなのだろう。思い当たる節は、たくさんある。
だが、クリスは、いつ、どうしてそれを知ったのか?…いや、そう思うようになったのは、なぜか、というべきか?
「…大丈夫?」
俯いて考え込...
王宮で車を借り、およそ半月ぶりに学院へ戻ってきた。
考えてみれば、こんなに長く学院を離れたのは、初めてかもしれない。少なくとも、ものごころついて以来は、初めてだ。
門をくぐって、直接森の中へ入り、クリスの指示通りに、「その辺をうろついてるの」に「森」の「守護者」を迎えに行きたい、と聞いてみた。...
次の日の午前中は、クリスの引越しの手伝いでつぶれた。
国王の新年の謁見もつつがなく終わったようだ。 夕食後、リンドブルムを部屋の中に放して、課題を片づけにかかる。セシリア一人がいないだけで、妙に部屋がだだっ広い。…いや、もともとだだっ広い部屋なんだが。
リンドブルムは、最初、周囲...