自作小説倶楽部4月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/04/30 23:25:41
『越えてきたもの』
終わらない。終わらない。
俺はつぶやいたそれがもう声になっているかもわからない。
俺は白い山を登ろうとするが足元の書類は見る間に崩れ落ちて上ることが出来ない。いくつもの山を越えてきたというのに山はどこまで続いているのかわからない。
「ヤッホーーーー」
必死の俺の耳に呑気な声...
『越えてきたもの』
終わらない。終わらない。
俺はつぶやいたそれがもう声になっているかもわからない。
俺は白い山を登ろうとするが足元の書類は見る間に崩れ落ちて上ることが出来ない。いくつもの山を越えてきたというのに山はどこまで続いているのかわからない。
「ヤッホーーーー」
必死の俺の耳に呑気な声...
『私が死んだ日』
「私が死んだ日のことを教えてください」
ウェイトレスが立ち去るのを待って、そう言った少女はあの日と同じ姿をしていた。紺のセーラー服に長い三つ編み、後ろで1つに編んだ髪を右肩に垂らすところまで記憶の通りだ。胸には〈西野〉という小さなプレートが付いている。
「その前に君は彼女の...
『鬼ごっこ』
いーち、にーーい、
悪夢の中、私は走っていた。
一斉に走り出した子供たちはどこに逃げたのか、もうわからない。
ひとりぼっちで、自分だけで逃げ切らなくてはならない。子供の私は身体も小さい。当然足だって遅い方だ。
鬼は私を狙っている。誰も私を助けてはくれない。本当はこんな怖い遊びはしたく...
『エクシー』
あれは僕がまだガウェインから見下ろされるような背丈の子供だった頃です。ガウェインというのは父が飼っていたボルゾイ犬の名前で、時々僕を鼻でつついたり押したり、自分手下だと思っていたようです。当時は父が海外で長く仕事をしていて、母は社交で忙しく。僕の世話は家庭教師のミス・ルートと数人...
『微笑の絵』
「灰田氏はどちらですか」
屋敷の玄関を出たところで藍子はふいに現れた刑事にひやりとした。喪服のような黒のスーツなのに顔には絶えず笑みを浮かべている。それでいて目は笑っていない。昨日初めて会った時から不気味な印象を持っている。
「書斎だと思います」
「失礼ですが、どちらにお出かけで...
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