自作小説倶楽部2月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2018/02/28 23:34:59
『ある夜の魔法』
こんばんわ。まあ、あなた泥棒? まあ、怖いわ。
うふふふふ。そうね。怖がっている態度じゃないわよね。
ごめんなさい。
この歳になると怖いものなんてなくなるのよ。
大丈夫。この家にはわたし以外誰もいないわ。
そんなことより、見てちょうだい。美しい絵でしょう? 水の絵よ。
じいっと見て...
『ある夜の魔法』
こんばんわ。まあ、あなた泥棒? まあ、怖いわ。
うふふふふ。そうね。怖がっている態度じゃないわよね。
ごめんなさい。
この歳になると怖いものなんてなくなるのよ。
大丈夫。この家にはわたし以外誰もいないわ。
そんなことより、見てちょうだい。美しい絵でしょう? 水の絵よ。
じいっと見て...
『青いため息/厄介な依頼人』
「わたくしは殺しておりません」
俺は困惑していた。朝早くに事務所を訪れた女は上品でゆっくりした口調は崩さないが全身から怒りをみなぎらせている。テーブルの上に放り出されたままだった古新聞には「青い貴婦人」または「呪いの青い魂」と呼ばれるブルーダイヤモンドの競売...
『大晦日奇譚』
「ああ、もう、ムカつく! あたしが一体何をしたっていうのよ!」 あたしはひとり毒づいた。「カケルのアホ! 課長のハゲ! アヤコのドブス! 母さんの…」 さらに悪口は三巡し、あたしは知る限りの罵詈雑言を吐き出した。 そもそもの起こりはあたしの彼氏のカケルがクリスマスの予定...
「思い出の味」
好きかどうかじゃなくて、誰にだって忘れられない味っていうのがあるでしょう? 卵焼きは甘いのが好きですか? 塩味? 俺、卵焼きだけは上手に作れるんです。
今はそんな話をしている場合じゃない?
すいません。でも話させてください。自慢になるようなことは何もないから自分のことを話す...
『ハロウィン・マジック』
「お願いだ。リタ。陽の出町商店街のために一肌脱いでくれ!」
従弟はそう言って、わたしの前でヒキガエルのように床に這いつくばった。いつだったか伝統的最大限の服従のポーズだと教えてくれた。『ドゲザ』だ。
「あのねえ。ちょっと。顔を上げてよ。たかが地方の貧乏商店街がハロウィンで...
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