自作小説倶楽部11月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/11/30 23:41:48
「思い出の味」
好きかどうかじゃなくて、誰にだって忘れられない味っていうのがあるでしょう? 卵焼きは甘いのが好きですか? 塩味? 俺、卵焼きだけは上手に作れるんです。
今はそんな話をしている場合じゃない?
すいません。でも話させてください。自慢になるようなことは何もないから自分のことを話す...
「思い出の味」
好きかどうかじゃなくて、誰にだって忘れられない味っていうのがあるでしょう? 卵焼きは甘いのが好きですか? 塩味? 俺、卵焼きだけは上手に作れるんです。
今はそんな話をしている場合じゃない?
すいません。でも話させてください。自慢になるようなことは何もないから自分のことを話す...
『ハロウィン・マジック』
「お願いだ。リタ。陽の出町商店街のために一肌脱いでくれ!」
従弟はそう言って、わたしの前でヒキガエルのように床に這いつくばった。いつだったか伝統的最大限の服従のポーズだと教えてくれた。『ドゲザ』だ。
「あのねえ。ちょっと。顔を上げてよ。たかが地方の貧乏商店街がハロウィンで...
『薔薇の家』
おかしいと感じたことですか? どんなことでも?
そうですね。薔薇の香りかな。こんなことが手掛かりになるとは思いませんけど。
ええ、お話しするのはかまいません。
気が付いたのは夏の始めのころでした。
朝起きるとかすかによい香りがするんです。神経がやわらぐような。妻に「いい匂いだね。...
『Blue Blood of Night』
「美夜が帰らないのよ」
ひさしぶりに顔を合わせた夕食の席で母が切り出した。
「そうですか」
「『そうですか』じゃないわよ。あなたのたった一人の姉よ。わたくしの娘よ。トラブルに巻き込まれたに違いないわ。探して来て頂戴」
「お言葉ですが、美夜のトラブルは...
『黄金の砂漠の夢』
あれは1943年の夏のことでした。私は16歳で照り付ける太陽の下、青い海原を前に絶望していました。少し前まで使命に燃えた一等水兵だったというのに。私が乗り込んだ巡洋艦はあっけなく敵の潜水艦に撃沈されてしまい。下っ端のため何故こんなことになったのか、船の任務が何だったのかすらわか...
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