ユリ01「旅」
(18)
「あの、桜さん」
「ん、何?」
夕飯のお手伝いをしているときだった。
こちらに背を向けた形で、野菜の調理をしている桜。
石を積み上げただけのかまどに、鍋をかけてある。
「えぇと……。皆さんは兄妹なんですか?」
私がそういうと、桜はげらげらとおなか...
どうでもいいことを書いています
ユリ01「旅」
(18)
「あの、桜さん」
「ん、何?」
夕飯のお手伝いをしているときだった。
こちらに背を向けた形で、野菜の調理をしている桜。
石を積み上げただけのかまどに、鍋をかけてある。
「えぇと……。皆さんは兄妹なんですか?」
私がそういうと、桜はげらげらとおなか...
トントントン、すいません、
誰かいませんか、寒いんです
私を入れてくれたなら
お礼に何か一仕事
暖炉にくべるまき割ります
熱いお粥も作りましょう
外には雪が降っています
トントントン、すいません
ユリ01「旅」
(16)
「あっそういえば、自己紹介してなかったね」
「え、あ、はい」
突然振られた。
「私、桜って言うんだ。15歳。よろしくねっ」
ずいぶん遅い自己紹介だが、心がなんだかホカってした。
「……あの。ユリでいいです」
小さく言った。桜はにっこり笑って、
「私...
ユリ01「旅」
(15)
やばっ!反射的に身を固める。
桜らしき人物が振り返った。
そして、桜らしき人物は一瞬驚いて、それからにっこりと笑った。
「何だ、おきてたんだユリちゃん」
「お、おはようございます」
思わず挨拶。眠気は吹っ飛んでしまった。
「事情は黒ちゃんから聞いたよ...
ユリ01「旅」
(13)
「早くっ、にんじんの皮むいてっ」
突然の大きな声に、私は目覚めた。
寝起きと熱のせいで、頭がボーっとして、すべてが夢だったかのように思えた。
けれど、辺りを見回すと、そこはあの小さなテントだった。
記憶が戻ってくる。
「タダっサボるなっつーの!黒ちゃん...