Nicotto Town



自作小説倶楽部12月投稿

『医師と極悪人』
「子供の頃は私は貴男を尊敬すらしていました」男は老人に向って話し始める。ここへ来るまで沸き上がった様々な思いを吐き出さずにはいられなかった。薄暗い室内にかすかな腐臭が混じる。壊れた窓から入りこむスラムの臭いだ。男が忌み嫌った。しかし懐かしい臭いだ。「私を覚えていますか? この病院か...

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自作小説倶楽部10月投稿

『ミステリにあってはならない結末』
「この事件の捜査を袋小路に追い込んだのは被害者自身でした」探偵の声は沈黙の中によく響いた。俯いたり、いらいらと時計を見たり、何事もなかったように紅茶をすすっていたり、それぞれの世界に閉じこもっていた関係者は一斉に探偵を注視する。探偵は一人掛けのソファに沈むように座...

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自作小説倶楽部9月投稿

『気の合う友達』
「当たっちゃった」と彼女がチケットをひらひらさせると集まった友達たちは口々に「さっすが、ユキ」とか、「うらやましい」とか羨望と賞賛の声を上げた。恒例の女子会だが大抵は自慢話会になる。その中でひときわ目立っているのが彼女だ。彼女の顔には満面の笑みが浮かんでいる。つい先日までストーカー...

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自作小説倶楽部6月投稿

『幻の蝶』濃い緑と色とりどりの植物が生い茂り、その隙間に昆虫や爬虫類、両生類など大小さまざまな生き物がうごめく密林に2つの異分子が紛れ込んでいた。人間だ。一人は女。細かく編み込んだ黒髪に黒曜石のような瞳、それよりは茶に近い肌。短いスカートから伸びた若い女鹿のような脚はけもの道を迷うことなく進んでいく...

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自作小説倶楽部4月投稿

『忘れ物』
あ、ここだ。コンビニの帰り道、家主を失った祖母の家にまっすぐ戻る気にはなれず、遠回りして、堤防にたどり着いた。堤防の上から川を見下ろすと長い草に覆われた河川敷が広がっている。ちょうど十年前の一年間だけ祖母の家に預けられていた私の遊び場だった。こんな場所でよく遊んだな。交通量の多い表通りを...

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