夜更け。
洗面台の灯りだけが、
小さな港みたいに部屋を浮かべている。
透明な液体を口に含む。
規定の三十秒。
そのあいだだけ、
時計は律儀に進むのに、
心の中では何年かが勝手に逆走する。
誰のことだったか、
もう名前も曖昧なのに。
春の匂いとか、
改札の...
夜更け。
洗面台の灯りだけが、
小さな港みたいに部屋を浮かべている。
透明な液体を口に含む。
規定の三十秒。
そのあいだだけ、
時計は律儀に進むのに、
心の中では何年かが勝手に逆走する。
誰のことだったか、
もう名前も曖昧なのに。
春の匂いとか、
改札の...
でかい入れ物のアイスを買ってきた。
冷凍庫を開けるたび、
そこにいる。
妙な安心感。
人生にはいろいろある。
税金とか。
人間関係とか。
見なかったことにしたメールとか。
しかし冷凍庫には、
でかいアイスがある。
スプーンを入れる。
一口。
もう一...
一、
港の灯りが ゆれている
波にまかせて 夜が更ける
笑うつもりで 生きてても
涙ひとつは 積み荷だよ おっとっと おっとっと
人生ゃ おっとっと
泣いて笑って また笑う
お笑い夜船 どこへ行く 二、 惚れたはれたの 波しぶき
過ぎりゃ昔の 潮の風
別れ上手に なれなくて
...
春の終わりだった。
夕方まで海を見て、帰り道をのんびり走っていた。
窓を少し開けると風が気持ちよくて、ラジオからは懐かしい曲が流れている。
助手席の彼女は、
「食べすぎた〜」
と笑ったあと、シートを倒して眠ってしまった。
穏やかな一日だった。
運転手も機嫌が...