自作小説倶楽部5月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2024/05/31 22:20:43
『記憶の大樹』
事が起きたのは6月の文化祭だった。僕の絵が盗まれたのだ。放課後に片付けのために集まった部員たちは渦巻き状の金具に残された切れ端を見つめ呆然としていた。美術部の部室に作品が展示される中、僕の絵だけがスケッチ帳から破り取られていた。教室内にいた生徒や父兄の誰も気づかぬ犯行だった。美術部と...
『記憶の大樹』
事が起きたのは6月の文化祭だった。僕の絵が盗まれたのだ。放課後に片付けのために集まった部員たちは渦巻き状の金具に残された切れ端を見つめ呆然としていた。美術部の部室に作品が展示される中、僕の絵だけがスケッチ帳から破り取られていた。教室内にいた生徒や父兄の誰も気づかぬ犯行だった。美術部と...
「黒猫と少女」
は、いけない。いけない。あたしは、窓ガラスに息を吹きかけると雑巾で拭いてゆく。窓の外には重い灰色の空が立ち塞がっていて恐ろしいように感じた。目をつむりそうになって首を振り、作業を続ける。死んだばあちゃんに「お前はぼんやりだ」と随分注意された。ばあちゃんが死んで働きに出て何年だろう。ぼ...
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