石畳の帰り道。敷き詰められているその石は桜石と呼ばれ、六角柱状の結晶なのだと大人になってから知った。やがて立ちこめる挽霞に気づいて道を歩く、東の空にほぼ丸い月が見え隠れする。まるで私に「早くお帰り」と囁くように、遠くで闇を縫って走る電車の音が耳にいつまでも残った。
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
石畳の帰り道。敷き詰められているその石は桜石と呼ばれ、六角柱状の結晶なのだと大人になってから知った。やがて立ちこめる挽霞に気づいて道を歩く、東の空にほぼ丸い月が見え隠れする。まるで私に「早くお帰り」と囁くように、遠くで闇を縫って走る電車の音が耳にいつまでも残った。
花びらは極楽から降ってくるものだから、埋もれないように気をつけてね。こんな迷信を思い出したのは、友だちのリビングかけられていたカーテンを見たから。
暖簾の掛かった小さな舗の戸口をくぐった、ぼんやりひとつ赤燈が点っている。もう店じまいか、それとも完売か。板の間に硝子箱をいくつか並べただけの舗先には誰もいない、ピタリ閉じた唐紙の向こうでかすかに音がした。「いらっしゃいませ」白髪の店主らしき老人が唐紙を開けた。水面のように磨かれた硝子箱の中にある、鶉...