瑠璃は五歳の頃から本物の時計を持っていた。
銀色の懐中時計で、パチッとおすと可愛い音がしてふたが開いた。
文字盤にはアラビア文字で数字が並んでいた、
矢の形をした長い針と短い針だけの品のある時計だった。
子供心に大切にしなければならないものだと、わかっていた。
それはお父さんがなくなる間際に、枕元で...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
瑠璃は五歳の頃から本物の時計を持っていた。
銀色の懐中時計で、パチッとおすと可愛い音がしてふたが開いた。
文字盤にはアラビア文字で数字が並んでいた、
矢の形をした長い針と短い針だけの品のある時計だった。
子供心に大切にしなければならないものだと、わかっていた。
それはお父さんがなくなる間際に、枕元で...
先日、仕事先で子供たちが数人集まってお菓子の話をしていた。
「僕はさ、イチゴポテトが好きだょ」
「うん、あれは美味しいね。
でも僕はねコーンカルパッチョの方が好きなんだ」
私にはそのお菓子がどんなものなのかわからなかった、
なんとなく想像してみたが・・・さっぱりである。
近頃の食品は進化している、当...
待ちに待った映画は、
とんでもないハズレでした。
私たちは無言で映画館を出て、
雨の中ひたすら人混みの中を歩いた。
もてあまして入った店のランプあかりにホッとした。
もう何んにも考えないことにしたと、
あなたは言った。
私は意味が分からなかった、
コーヒーがきた。
分かっているのかな、
あなたが難し...
その人は、しわを見るとやって来る。
しわひとつない、真っ白なシーツ。
それに、しわを寄せてしまうのも人間なら、
ふたたび、しわひとつなく伸ばすことが出来るのも、
また人間です。
しわは、また、人の顔やら脳にまで刻まれ、
つるつるとした無知に、深みと貫禄とを刻み込みます。
深みは欲しい。
しかし、しわ...
どうしようかと迷うこと、
小さな期待と大きな不安。
何もかもはっきりとよくわからないからといいってこともある。
迷って迷って、
最後に心の決めたところへ行けばいい。
マーブル状に入り組んだ心模様が、
透き通るように見える。
どうしてこんなにあやふやな気持ちになってしまうんだろう。