散歩道のカラマツがいくぶん黄色くなりはじめた。
野葡萄や紅や紫の果をつけている。
そんな林の道を歩くのが好きな私は、
通り過ぎていく二人の男とすれ違った。
その男たちの会話が耳に入り、
引き寄せられるように後をついて行った。
その一人の男は背中に、
背丈ほどの奇妙なプロペラをつけていた。
「今日あた...
✪マークはメルヘン・ファンタジー・人間模様の小話でし
散歩道のカラマツがいくぶん黄色くなりはじめた。
野葡萄や紅や紫の果をつけている。
そんな林の道を歩くのが好きな私は、
通り過ぎていく二人の男とすれ違った。
その男たちの会話が耳に入り、
引き寄せられるように後をついて行った。
その一人の男は背中に、
背丈ほどの奇妙なプロペラをつけていた。
「今日あた...
生涯に出会う人の数は、
それほど桁はずれに増えることはないけれど。
「また逢いたい」「また逢える」、
人の数はちょっとした心がけで増やすことはできる。
たとえば、
名刺をもらった人にメールを書いてみる。
メールをくれた人に電話をかけてみる。
逢いたいと思った人には、迷わず逢いに行く。
仕事を通じて出...
のどかな声を上げて、
麒麟鳥が空を舞っている。
ケラケラの声が涼しげに響く中を、
無音のモーターカーが横切っていく。
運転手は先に車を降りて助手席のドアを開け、
座っている年老いた女性に声をかけた。
「おりおり村にようこそ」
静かに目礼をした女性はゆっくりと旅館カミラの中へと入っていく。
「よし、...