■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の…(38)
- カテゴリ: その他
- 2011/04/02 00:04:13
■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の跡 十二(1)
十二
淨玻璃の間《ま》に隣して大きさは其の十が一とも見るべき一室あり。ルイ十四世の寢室にして、彼れが臨終の寢床も今なほ舊のまゝなりといふ。蓋し王者の富と力とによりて、あらん限りの善美をつくせる此のヴェルサイユ宮殿に於いて、更に其の...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の跡 十二(1)
十二
淨玻璃の間《ま》に隣して大きさは其の十が一とも見るべき一室あり。ルイ十四世の寢室にして、彼れが臨終の寢床も今なほ舊のまゝなりといふ。蓋し王者の富と力とによりて、あらん限りの善美をつくせる此のヴェルサイユ宮殿に於いて、更に其の...
■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の跡 十一(2)
此の室、庭に而して十七個の大窓を開く。窓の高さ三間に余り、幅之れにかなふ。白玉を溶《とか》したるが如き日光の窓より汪溢して正面の壁に達すれば、こゝには柱間悉く大玻璃鏡を掲げたり。埋め木の床また精磨したる一面の玉の如く、走るものをして直ちに滑り且...
■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の跡 十(2) - 十一(1)
すべてこれ歡樂圓滿の姿なり、粉脂温柔の氣、歌舞周旋の態、到るところに充ちたり。壁に名畫を懸け、床に名器を列ね、柱に彩紋を施し、天井に神仙を刻む。二百の房子之くとして是れならざるはなし。人間富貴の家も亦た極まれるかな。
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■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の跡 十(1)
十
幾變遷の後のヴェルサイユは、一箇の美術宮たるに過ぎざれども、其の昔は、眞に情海無限の波瀾をこゝに寄せたり。庭の構へは冷《つめた》きまでにクラシカルなり。膨らみに微妙の線を見せたる古代の石瓶、冷靜の美を希臘に寄せし大理石の彫像、此...