Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(145)

 軽くこめかみを押さえて溜め息をつく。
 「あーなるほどね。…撫でて気が落ち着くんだったら、思う存分どうぞ。その代わり、こっちが我慢できなくなったら遠慮はしないからな」
 「思う存分、って……」
 クリスが苦笑する。
 「そう言われて早速手を伸ばせると思う?」
 「……クリスが出さないなら、こっちが出す」
 手をのばして背中側に回し、クリスの体を抱きしめる。腕の中の体が軽く息を呑み、可愛らしい声を上げる。
 「俺の好きにしていい、って約束だったな?」
 クリスの返事を待たずに背中に回した手を腰の方へ滑らせる。堪えきれない様子で吐く吐息が熱い。腰の丸みに沿って滑らせた手を、そっと下へ動かす。
 「好きにしていい、とは言ったけど、……応じるとは限らない、って…」
 体をこわばらせたクリスがかすれた声でそう言う。
 「へえ…応じる気は、無いんだ?…本当に?」
 空いた方の手で、クリスの喉元を撫で上げる。そのまま顔を上向かせると、うっとりとまぶたを伏せている。
 「そんな顔しといて、応じないって言われても説得力が無い」
 「……体が反応するのは、別問題」
 そっけない言葉とは裏腹に、それを吐く声は甘い。
 「じゃあ、応じる気になるまで、存分に触らせて貰おう」
 ほとんど触れそうになるまで顔を近づけてそう言うと、「…意地悪」とつぶやいたクリスが手をのばして俺の顔を引き寄せた。
 「寝かせない、っていうのは、冗談じゃなかったんだ?」
 触れ合わせた唇の動きだけで、クリスがそう問う。
 「クリスが、すぐに戻ってくる、という確証があれば別だが?」
 同じく、唇の動きだけでそう答える。
 「…確証なんか、ない」
 あまりにもきっぱりと言い切るので、ちょっと笑ってしまった。
 「…あのね、私の頭は、この後大変だから、早く休んだ方がいいって命じるんだけどね」
 「うん?」
 いきなりの甘え口調に耳を疑う。
 「…私の心と体は、そうするのを嫌がるの。……どっちに従った方がいい?」
 「……そんな事可愛く訊かれたら、眠くなるまで可愛がってあげよう、って事になるが?」
 改めて、そんな事を言いだした目の中を覗き込む。
 「大変なのは、主にアレクの方なんだけど?…それに、アレクを寝かせたまま出かけたら、何するか判らないんでしょ?」
 「どのみち、寝付けないのは、同じだ。だったら、気が楽になる方がいい」
 寝付けないのなら、朝まで起きていればいい。そう開き直れば、気が楽だ。

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