Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


以前書いた物語「いんこな日々」続編

クリスマスの輪廻-その2-

「こちらです」
店員さんがすっと差し出した手のその先にセキセイがいた。
そのセキセイは、ショーウインドウの端っこの古ぼけたかごの中から、外のキラキラ光るイルミネーションをじっと眺めていた。初めてセキセイと会ったときの情景と重なった。

時間がとまる。魔法がシャワーになって降り注ぐ。世界が私といんこだけになる。

セキセイがゆっくり振り向いた。
「お久しぶり」
感情の波にのみこまれて私の声は震えた。
「お久しぶり」
とセキセイが答えた。
「なんだか色違うけど?」
セキセイは以前の青色ではなくて黄色と緑のハルクイン種だったのだ。
「そそ、イメチェンよ。人間と違って洋服替えるみたいにいかないからね。生まれ変わったときくらい、色かえてみたくなるわよね」
「・・・イメチェンした割には相変わらず、売れ残ってるじゃない」
思わずツッコムとセキセイは気分が害してムッとた。
「売れ残ったんじゃないわよ、あんたを待ってあげていたのよ、感謝すべきでしょ、相変わらず失礼ねっ」
「あんたこそ性格変わってないわよ。どうせイメチェンするなら、性別も変えてみればよかったのに」
「性別はあいでんててえーの問題なのっ!色変わるみたいに事は簡単ではないのっ!」
「アイデンティー、ね~。これまた難しそうな単語を使ってプライドだけは高いわねっ!」

しばし睨み合い。二秒…三秒…そして一挙に緩む空間。
「あはは、あなたと話すのはやっぱ楽しいわ」
と私。続けて尋ねる。
「あの後、あの飼い主のとこで幸せだったの?」
「あなたが、私のあの時の未来を先取りして体験した、おそらくそのまんま、幸せな鳥生だったわよ」
「んじゃ、あの飼い主の彼女、結婚したのね?」
「うん、見届けて空に戻ってきたわけよ」
セキセイインコとして暮らした数年の情景が走馬灯のようにぐるぐる回った。オカメのグレ子、セキセイ軍団のちゅう坊、ぐり子、そして若いチビっ子三羽衆…私がいんこだった日々をともに過ごした仲間いんこだ。そしてりょうちゃん。
「あんた、名前はどうなっていたの?」
と私はまた尋ねた。
「りょうちゃん。あんたの仕業でしょ?」
軽くこちらを睨むセキセイ。
「いきなり、くちばしが勝手に動き出すんだもの。思わず飛び上がっちゃったわよっ」
「あはは、ごめんごめん。自分の名前の涼子からとって、飼い主にアピールしたもんなぁ。だって、飼い主の彼女ってとてもいい人だけど、名付け方のセンス、ゼロだったし」
「確かに」
お互いに頷きあう。
「さて。今度は私が質問する番よ。んで、あなたはこの十年何していたの?どうせ独身なのはわかっているけどね」
うぬっ、直球がズバッときた。
「~~~~~」
「自分はからっきしなのになぜか恋愛相談されて、縁結びに奔走してね?」
ううっ、そうだけど、そうだけど。
「なんで、わかるの?」
理由なんかとっくにわかってる。だけど、どうしてもグチっぽく尋ねてしまう
「知ってるくせに」
とセキセイ。
「私が”りょうちゃん”といういんこな生活過ごしていた時間、あなたは”人間版りょうちゃん”で過ごしていたんでしょ?」
そうなのだ。このセキセイと私は表裏一体なのかもしれない、そう感じずにはいられぬ十年だったのだ。私のセキセイバージョンとセキセイの人間バージョン。

だから?私とセキセイがクリスマスの魔法で話し合えるのか?

時間がちょっと動いた。急がなくちゃ間に合わなくなる。

「んで。今日はどうするの?また、いんこになりたい?私の次の数年間、先取りしてみる?」
こちらのあせりも気にもせずセキセイはのんびり尋ねてきた。
「いやいや、今回は違う」
思わず苦笑してしまう。
「だって」
私はセキセイと見つめながら言った。
「だって。飼い主は私だから、自分の未来を見るようで趣味悪いじゃん」
「それって」
セキセイが目を大きく丸く見開いた。
「今度こそ、ほんとに?」
私はうなずいた。
「今度こそ、いっしょに暮らそう。ね?」
「うん」
セキセイがうなずいた。
私は、セキセイから視線をはずして店内を見渡した。近くにいた店員さんに話しかけるために。
「あの、このかごごと…」

「え?」
「あ?」

カゴ…それがまるで、キーワードのように私とセキセイの空間がゆがむ。デジャブ。駄目!今度こそ、私はあなたの飼い主になるんだからっ!そのためにここに来たんだから!
でも、空間は正常にもどりかけていた。魔法がとける。時間がない…。

「すいませんっ、その窓のとこにいたセキセイっ、売れてしまったんですか?」
店の入り口に男の人が転がりこんできた。
「そんな…」

(つづく)

アバター
2009/12/25 09:56
なんだろう気になる展開
ドキドキだね
アバター
2009/12/24 22:52
こんばんは☆彡

えーっ!?またまた予測のつかない展開♪
続きが楽しみです(^^)
アバター
2009/12/24 21:50
面白いです。ほかに言葉がありません。面白い。
アバター
2009/12/24 20:04
おっ、もしかしたらその男の人って~|・ω・*)チラ

展開が気になりますなぁ~^^ 面白い
アバター
2009/12/24 08:14
・・・・やばい・・・・またもや インコな日々??


飛び込んできた男性は牛丼屋の彼??
それとも 職場の知り合い??

ぼうぼうさんのお話の展開ってすてき!!
ぐんぐん魅かれていきます(^_-)-☆



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