以前書いた物語「いんこな日々」サイドストーリー
- カテゴリ:自作小説
- 2009/12/21 00:20:12
「シークレット・クリスマス」-その3-
ショップに戻ると、かごの横に魂の抜けた彼女のからだが突っ立っていて(こういうのをでくの棒っていうんだな)、そして肝心の私のからだ、彼女の魂が入った私のからだが目をつぶって止まり木で眠っていた。でも、私には感じることができた。時間が私のからだの中で猛スピードで飛んでいた。彼女が何かをいんことしてすさまじいスピードで体験している感触だけは伝わってきた。それは、彼女の魂の体験であって私の魂が介入できる雰囲気はまったくなかった。でも不思議と不安はなかった。私は静かに自分のからだの横で待った。
しばらく待っていると、いつも違う感覚が一瞬魂をよぎった。空間がぐにゃりと曲がった感じ。吐き気を感じる。
「おえ」
二三度、えぐえぐして、ふと我に返ると
「ん?」
あれ?夜じゃん。え?どゆことさ?店の閉店時間前。店員さんがいそいそ片付けをしている。
「んもう、なんでイブの閉店間際に客がいるのよ~、私だって約束あるのに」
店員さんの心の声がブーブー言ってるのが、魂の状態なのでわかってしまう。ってイブ?ってどゆことよ?私は一晩遊びまくって楽しんできたはずなんじゃが?つまり、時間が引き戻されたってこと?そうこうしているうちに彼女の魂の入った私のからだも時間が引き戻されたのを感じる。
「うえええ」
自分の時間のゆがみよりもっとすさまじい時間のゆがみが補正されたみたいだ。だからって連動して私の魂までこんな気持ち悪くなるのはちと理不尽な気がするわっ!とはいえ、彼女の魂を自分のからだに押し込んだのは自分なのだから自業自得だと思いなおす。それより彼女は私の中で一体どんな経験したんだろうか?それがすごく気になった。
と、すうっと彼女の魂が彼女のからだの中に戻っていった。同時にわたしの魂が自分のからだの中に吸い込まれていく。自分の体と魂が合体した。
「ふぅ」
大きく一息ついて、彼女を見るとまだ魂がからだに戻ったことに気づいていない彼女の目から水がすうっと一筋流れた。どんな体験していたんだろう、ますますきにかかるじゃないか。その水で彼女は目が覚めたようだ。目をゴシゴシこすり、きょろきょろあたりを見回しそして私を見た。
「どうだった?楽しかった?」
私が尋ねる。
「ってことは…あんたの仕業だったの?」
まぁそうだわねぇ。
「だって、いんこになってみたいって言ったでしょ?」
私は言った。
「だから、私の時間をちょっと貸してあげたってわけ」
ちょっと得意げに私が言うと、彼女はムッとした顔で言った。
「どうしてそんなことが出来たわけ?今まで、 あんたはどうしていたの?私のからだに入っていたの?」
矢継ぎ早に彼女は質問をとばした。私は クスクス笑いながら答えた。
「なんで、あんたのからだなんかに入らなきゃならないの?からだの持ち主でさえ嫌がってたってのに?」
非常にするどいつっこみに彼女は、グッと答えにつまった。私は続けた。
「私がどこにいたかは秘密だよ」
そう言うとちょっと間を置いて 私はキラキラした瞳で彼女を見つめた。
「今日は クリスマスイブだから。クリスマスプレゼントって思えばいいんじゃないの?」
それから後のことは繰り返しになるが、人間に戻った彼女に私は飼い主になってくれないか頼んだら、飼い主になってくれると彼女が答えた。すごく嬉しかった。すっかりその気になっていたら、そこに閉店まぎわにもう一人の女の人が飛び込んできた。その女の人を見るなり、彼女の顔色がみるみる変わり、いきなり泣きながら
「やっぱり、私にはあなたを飼えないの、ごめんねっ」
と言うや店を飛び出して行ってしまった。私は何が起こったわからず、
「ちょっと待って!置いていかないでっ!」
と叫んだ。そのとき、からだ貸した彼女でなくて、その飛び込んできた女の人と視線が合った。不思議ななつかしさに包まれ、彼女が、私を買ってしまった。
そうして私は売れ残りいんこから飼われいんこになった。すっかり疲れて、小さな箱の中で私はうとうと眠ってしまって、結局その年のいんこのシークレットクリスマスに参加しないでしまった。
翌年のクリスマス・イブ、友人いんこに散々文句言われながらも
「いい飼い主さんに出会えたいいクリスマス・イブだったみたいだから、すっぽかしたの許しちゃうわ」
と自分のことのように喜んでくれたのだった。
(おわり)
追記 えっと短編ですみません(^^;。きのう、続きを期待する書き込み
に、あと1回で終わること伝えるべきか考えましたが、わからないところ
がいいかと思って、黙っていたことを、お許しください
読んでて楽しかった
ありがとう
いいお話をありがとうです♪
これが飼い主さんとの運命の出会いにつながるのですね(^^)
ステキなお話を読ませていただきました✿ありがとうございましたm(_ _)m
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