以前書いた物語 いんこな日々-第14章-(後編)
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/11/23 00:11:23
14章 さよならの向こう側(後編)
呆然と立ち尽くす私の横を「飼い主」が、足早にすり抜けて 鳥の
餌売り場で 餌を選び始めた。混乱した頭で しかし 私は必死にバラまかれた事態の破片をかき集めた。やがて。
ああ そうなのか、そういうことなのか。
私は飼い主さんを見て それから もう一度期待で胸ふくらませたいんこを見た。言いたくなかった。でも…私は頭を振ると いんこに話しかけた。
「ごめんね、私 あなたの飼い主にはなれないみたい」
言ったとたん 目から涙が溢れてきそうになった。
期待が大きかっただけに いんこの落胆ぶりも大きかった。
「どうしても どうしても 連れて行ってもらえない?」
私はそれには答えず 震える声で
「さっき いんこになって楽しかったか?ってきいたよね?すごく楽しかったよ。だから あなたの未来も とても楽しくなる、私が約束する」
ようやくそれだけ言うと ショルダーバッグとクリスマスケーキを持ち上げるといんこのかごの前から足早に立ち去った。
「ねぇ!待って!」
背後からいんこの声が叫んだ。私が理解できたいんこの言葉はここまでだった。
「ぴーーーっ!」
続いての叫び声は いんこの鳴き声になっていた。叫びながらいんこはかごに飛びついた。ちょうどそこに 通りかかった飼い主が 餌を抱えたまま 立ち止まった。飼い主といんこの視線が合った…。それが真実の運命の出会いだった。
「お客さん かご ありましたよ」
店の奥からキャリーを抱えた店員さんが 出てきた。
「ごめんなさい、買うのやめました。お手数かけて ごめんなさい」
こぼれ落ちる涙を拭い あっけにとられている店員さんにあやまると私は店を飛び出した。
悲しかったわけではなかった。ただ 青いいんこが愛しくて愛しくてたまらなかった。道を歩きながら ポロポロと涙がこぼれた。やがて 涙は止まり 凪の海のように静けさが 心に広がって行った。
バスターミナルに着くと 待合室の端っこのイスに腰掛けた。
「そうだ、腐って後悔する前に クリスマスケーキ 食べようかな」
クスッ。私はちょっと笑みがもれた。いんこになって 食べなかったと後悔したことを思い出したのだ。ガサゴソと包みをほどくと クリスマスの小物に彩られたホールケーキが姿を現した。付属のカット用のプラスティックのナイフを手にとった。
「メリークリスマス」
小さくつぶやくと 一口大に切り取ったケーキをパックリ頬張った。
今日の出来事を 私は一生忘れない。
やがて定刻 故郷に向かうバスが出発した。
(いんこな日々-おわり)
連載を終えて
私も 久しぶりにこの話と向き合えて いろんなことを思い出します。
多少ですが書き直した部分などもあって、完成することはないの
かもしれません・・・。
インコ飼ってない人に読んでもらうという体験は私にも非常に
新鮮でした。今までインコ 鳥に興味なかった人が ちょっとでも
関心持ってもらえたら 本望です。
長い間 読んでいただき ほんとにありがとうございました。
付記 カナリーシードですがりょうちゃんの偏食のおかげで
全てのいんこがカナリーシードをたべることができなくなった
ことを付記しておきます(^^;。いんこは 味覚を簡単には
忘れませぬw
でもあえて連れて行かないという選択をしたことで、主人公が「運命の出会い」に頼らず、自力で運命を切り開いていける人になったのだと感じられました。
インコになって、いつのまにか馴染んでしまって、時間はどんどん経つし、人間に戻れないんじゃ…とハラハラしながら読ませていただきました。
連載、お疲れ様でした♪
最後の泣き声が心にじーんってきちゃった
最初の時はインコになって大丈夫なのかなぁ~ってはらはらしたけど
インコになって性格の変化その上たくましくなって
仲がよくなかったグレコとグリ子と中坊と子供3匹
いつのまにかお互いを心配しあうまでなって
感動しました
これから先の人間に戻った後も気になるけど
きっとどんな事があってもたくましく生きていくんだろうなぁって
私も強くならないと駄目だなぁ~思っちゃった
長い間、連載につきあってくださってありがとうございました。
一人一人受け取り方は違うと思うです。それは読んだ人の
世界です。
鳥飼いの友人の感想は、「私が主人公ならそのまま 青い
いんこを連れて行く」ってのが多かったです。そしたら
また新しい展開になりますよね^^。
飼ってる人 飼ってない人で微妙に違う または相当違う
とらえ方にほんとに、勉強になりました。
ちなみに、「飼い主」さんが主人公の人間のりょうちゃんと
すれ違ってることを物語物語のの途中でさりげな~く
話していますw
>イズミさん
こんなお話に本格的な評論ありがとうございました。
その文章のすばらしさに圧倒されています(^^;;;。
ご指摘の通り、句読点をつけたりつけなかったりは、
私の悪い癖です。最初、文章に句読点つけてなくて、
途中からつけるようになったのですが、昔からのクセで
句読点を付け忘れている箇所がたくさんあります。
改めてこれから気を付けていきたいところです。ご指摘
ありがとうございました。
読んでくれた皆さんへ
誤字脱字も気になったとは思います。素人を理由にするのも
ずるいですが、勢いで書いて推敲をほとんどしないまま
アップロードすることが多いものですから(大汗)
勢いのあるうちにアップしないと、推敲を始めると
いつまでも文章をアップできないというクセがありまして、さらに
文章の勢いが推敲でそぎおとされていくような気がして
いつも校正のめちゃくちゃな文章をあげております。
今回は以前書いた物なので、多少、手直しなどもしましたが
読みづらい部分、誤字、たくさんあったと思います。
そんな中、読んでくださりコメントいただき、力をもらった
ことに感謝します。
本当にありがとうございました。
いやぁ、泣きました(つд⊂)
最後が切ないですが、でもハッピーエンドですね;;
インコ飼った事ないですが、なかなか興味深い鳥(?)ですね。
ぼうぼうさんのお話を読んでいて、愛くるしさが伝わってきました。
人間のりょうちゃんもインコの経験を経て、ちょっと丸くなり、これから
幸せが訪れる感じがしますね。
素敵なお話をありがとうございました^^
とっても楽しめましたし、自分が飼っていた文鳥やハムスターにだぶらせて、切なく読めました。
小さくても輝いてる命、大切に一緒に過ごしていけるといいですよね。
そしてまた自分の人生も輝く命。大事にしようと思いました。
お疲れ様でした、というか、また期待してます〜〜〜♪
連載お疲れさまでした(^^)とても楽しく読ませていただきました!!
切ない最後ではありましたが、この出会いは「そう」ではなかったけれど、
彼女(りょうちゃん)のための出会いはいつかどこかに必ず用意されていると私は信じています!
インコを飼ったことはないのですが、なんだか彼らがとても身近になったように感じてます。
余談ですが、最近街でインコのイラストなどを目にしますと、
ぼうぼうさんやりょうちゃんのことが自然と浮かびます(^^)
もしまたいつか機会があるとしたら、
ぜひぼうぼうさんの生み出す世界を見せていただきたいと願っております❤
楽しい時間をありがとうございましたm(_ _)m
実はずっと拝読していました……(こそこそと)。
インコを飼ったことのある人にしか書けないストーリー、という感じで、非常に興味深く読みました。
私はインコを飼ったことがないので、性質や特性など、なるほどとうなずきながら読んでいたので、
インコを飼ったことがあるかたにはまた違った読みかたができるのでしょうね。
実体験に満ちたリアリティあるインコの描写がこのストーリーのオリジナリティということで、
ほかにない個性を確立していると思います。
個人的な印象ですが、「最初は周囲に恵まれないかわいそうな主人公」だったのが、
「客観的に見ると扱いづらい厄介な女」だったことに自分自身が気づく、という点が、
ストーリーテリングとして素晴らしかったです。
こういう話だと「理不尽に主人公をふる男」「クビにした店長」などが悪役になりがちですが、
インコになったことで自らの落ち度に気づいて改心する。
というテーマと、人間がインコになるという現実離れした設定が無理なく結び付いて、
「別に人間がインコになる必要ないじゃん」という批評を受けつけない、隙のないプロットだと思います。
あと、ちょっと読んでいて気になったことを。
>呆然と立ち尽くす私の横を「飼い主」が、足早にすり抜けて 鳥の
というように、文の区切りを表す際に「、(読点)」と「 (スペース)」が入り混じっている点が気になりました。
スペース多用は散文詩的な印象をもたらすので、それを狙ってるのかな? とも思いましたが、
神経質な読み手だと、「文章作法が気になる!」と言う人もいるので、
読点で統一してしまったほうが無難、かもしれません。
(が、「これが自分の文章スタイル!」という意思があるのなら、黙殺して構わないです)
……などとぐだぐだ語ってみましたが、最後まで読ませる力を持った文章でした!
面白かったです!(これだけで十分ですよねえ……^^;;;)
ほんの少しでも参考になればと、多少批評めいたことをしてしまいましたが、
気に障りましたらさくっと削除なさってください……
引き込まれました
人間のりょう子さんが、どうなったかってことは蛇足なんですよね
気にはなりますが・・・・
青いインコは同じ未来をたどるのかしら?
毎日 コメントありがとうございました。
トシさんのコメントが連載の力になっていたのは事実
です。ほんとに感謝しています。
こちらこそ ありがとうございました^^
これからもよろしくです
暇な時に気が向いたら読んでくだされば 嬉しいです
飼われるために生まれてきたインコは、すでに
自然界で生きていくすべを持ってないのです。
たまにたくましく野生化しますが、外来種となって
日本の自然界のサイクルを崩す存在になります。
たいていは、悲しいですが外界で生きていくことは
できないんです。
我が家は オカメインコを二羽飼ってます^^
どうもありがとうございました。毎日の楽しみになっていましたから。
ハッピーなのかどうなのかなFINなのに、爽やか。
今テスト期間中なのでテスト終わったら読みますね♪
私もインコ飼ってましたよぉ~!!
お父さんが素手で捕まえて持って帰って来たんです。
私が小3くらいの時脱走しちゃいましたが・・・。
いつも窓あけてても逃げなかったインコがある日突然窓からひゅ~っと。
自由に生きれてるならそれはそれでいいと思いますが~!!
ぼうぼうさんのインコはどんなインコですか?
よければ教えてください~!!