以前書いた物語 いんこな日々-第13章-(前編)
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/11/19 00:03:35
13章 世話焼きいんこ(前編)
時は駈けぬけるように過ぎて行く。
飼い主と彼氏さんは いつしかこの部屋で同棲を始めていた。私はこの彼氏さんとすっかり仲良しになっていた。
初対面で私が彼氏さんを怖がらなかったのが 好印象だったのだと思うが 飼い主が留守で暇な時なんかは 私を肩にのせて よく独り言をつぶやいた。元人間なので話の内容がわかるだけに 私は飼い主より彼氏さんのことに詳しくなったと思う。この事実に彼氏さんが気づいたら きっと 恥ずかしくて家出しちゃうかもしれないな。そういう性格だってことね(お見通し)、ぬふふふ。
いんこ軍団は ちゅう坊&グリ子夫婦の最初の巣引きで増員した三羽の若いセキセイ衆以来 メンバーに変化はない。私と若い衆の妨害作戦が効を奏したのかどうかはわからんが 夫婦の巣引きへの情熱は いつしか失われたようである。若い三羽衆も すっかり大人いんこになって それぞれ、自分のライフスタイルを確立していた。
一番上の兄セキセイは なんとオカメのグレ子との 不毛の恋に走っておった。でも グレ子が幸せそうに 冠毛に愛のゲロこびりつけて(オカメの背中にのっかったセキセイは サイズ的に愛のゲロを 冠毛になすりつけるのが精一杯なのね(情けなや~))歩き回っているのを見ると 不毛でもいいのかも、と私も思うようになった。
二番目のメスセキセイは やはりメスらしい強気の性格だったので 私は彼女に次世代のボスになるべく 心身を鍛えるように伝えた。そろそろ世代交代の時期であることを 私自身も はっきり感じていたからだ。三番目のチビセキセイ(成鳥だけどもさ)が 一番私を慕って 金魚のフンのようについてまわってきていた。
「僕はいつまでも おばちゃんの弟子だよ!」
が彼の口ぐせであった。弟子でいいといういんこにリーダーシップを求めるのは無理である。やはり、次世代リーダーは二番目のメスセキセイが適任だ。するどい観察力で私は今後の飼い主カップルといんこ軍団の今後を考えていたのだ。そこが、元人間のなごりかもしれぬ。
そんな生活を私は送っていた。幸せだ、と私は思った。不満ばっかり感じていた人間だった時を思うと 私も随分おとなになったものだ…。
ある日 飼い主が留守で 一人残った彼氏さんがいつものように 私をかごから出して 肩にのせた。と 突然、
「けっ、けっ、けぇ~~~ ゲヘゴホゲヘゴホ」
何事さ?私は びっくりして 彼氏さんを覗き込んだ。真っ青な顔に汗がタラリと一筋流れた。ちょっと!大丈夫?んが 私の心配など眼中にない彼氏さんは 真っ青な顔のまま 私を肩から指にのっけて 私に食いつかんばかりにまた 絶叫始めた。
「けっ、けっ、けっこん!!」
何?何だって?
「けっこん!けっこん!ゲヘゴホ、して、ゲヘ くださいっ!」
彼氏さんは 私を凝視したまま 一気に声を吐き出した。と とたんにガックリ肩を落とし 顔をふせてしまった。
けっこん…もしかして プロポーズ?いやぁねぇ、私はいんこよ、あなたと結婚できるわけないじゃない。道ならぬ道をいく覚悟はあるの?…なんてな、んなわけないやん。私相手にプロポーズの練習ってわけね。ようやくその気になったのね、つきあいだして何年になるんだったけ?そうか そうか 遂にね…。おめでとう!
しかし 彼氏さんは ちっとも おめでたそうな表情でない。私はまた 彼氏さんの肩に飛び移った。
「駄目だっ、言えないっ!」
「断られたら?でも 怖がっていたら 前に進めないだろ…」
とブツブツ言うと う~~んとうなって頭を抱えこんでしまった。そういえば…。私は この苦悩を眺めているうちに ちょっと嫌な予感が頭をもたげてきた。お互いの気持ち告白するのに このカップル 一年かかったんだよな。で。今回のこの状態を照らし合わせると。つまり 実際のプロポーズにたどり着くまで 一体 どれだけの時間 費やすことになるんだろう?一年でプロポーズまでたどりついたら御の字だ。考えるだけでめまいがする。時間かかりすぎだよ!考えるうちに 私の心にも暗雲がたちこめて 彼氏さんと肩の上の私のまわりの空気は おめでたい話とはほど遠く ドヨドヨと澱んできてしまった。
案の定 彼氏さんはプロポーズが出来ないまま 飼い主の留守中にプロポーズの練習を繰り返す日々が始まった。練習しては 「やっぱり駄目だっ!」と絶望する、繰り返しはいつ果てるともなく続いたのだった。
ある日 私は 三番目のチビセキセイを呼ぶと
「実は 頼みたいことがある。厳しい訓練を積まねばならん作戦だが やってもらえるか?」
と尋ねた。巣引き妨害作戦以来の話だったからチビは興奮した面持ちで
「もちろん!やるよ!」
と興奮して頭の毛逆立てて即答した。
(つづく)
それにしても何回練習してるんだろう
チビに何をさせるのか(。-`ω-)ンーわかんない
この後の展開が気になる
こ、後継者問題勃発…プロポーズ問題も勃発…。
りょうちゃんの気は休まる暇がないようですね(^^;)
応援しつつ、続きを楽しみにしたいと思います❤
やはり、夫婦になるならなんでも言えないとねぇ~あはははw
そういう問題じゃないね~w 失礼しました インコの世界って 面白いのね^^
あ~~、ぼうぼうさん!!
お話の展開がうまいわぁ
気になる気になるぅ