以前書いた物語 いんこな日々-第12章-(後編)
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/11/18 00:03:22
12章 懸案のいんこ問題(後編)
今目の前に存在するチビッコギャングだけなら 飼い主や親いんこの目を盗みつつ しっかり誰がえらいのかを教え込めば済む話である。問題は…私は 深いため息をついた。
問題は ちゅう坊とグリ子カップルが 再び巣引きをして新たなチビッコギャングが登場しかねない、ということだ。
「おばさん」と生意気なチビいんこはのたまいやがったが 今まで心の奥底では感じながら 目をつぶってそっぽを向いていた現実、すなわち自分が もう若いピチピチギャルではないということを認めないわけにはいかなかった。
ならば 尚更。今後 ますます「おばさん」になって体力的にも劣っていくであろうなかで 新たなチビいんこに 立ち向かっていくなんて 出来なくなっていくはずだ。
ならば どうするか?答えは 一目瞭然である。私はキッと顔を上げた。
今だ説教を続ける飼い主の手の中だったもんだから 飼い主と視線が合った。私の視線に凄みを感じたのか 飼い主は説教をやめ
「りょ、りょうちゃん?」
と私に呼びかけたが 私は一点を見つめたまま(たまたまそれが飼い主の視線と合ったが んなこたぁ知ったこっちゃない!)、自分の中の決意を 何回も何回も 繰り返し 心に刻み付けていた。
ちゅう坊とグリ子の巣引きを徹底的に邪魔してやる!
そうさ、簡単な話である。巣引きできなきゃ チビッコギャングも発生しないっていう話だ。なんて素晴らしい作戦なんだ、思わずニヤリと心の中でほくそえんだ。いんこなんだから 顔の表情がニヤリとするわけないはずだけれど 内側から滲み出る何かを感じたのか飼い主は 不気味そうに 私を解放した。
それ以来。放鳥時間になると 私はちゅう坊とグリ子を徹底的にマークしては 二羽がいい雰囲気になりかければ 強引に割り込み二羽の仲を邪魔しまくってやったさ。
「あんた 私に何の恨みがあるわけ?どういうことよっ!?」
とグリ子がブチ切れて 言い募ってきたが 私はすかさず
「ちゅう坊!あなたの奥さんてば怖い!助けてぇぇぇ!」
と ちゅう坊にすり寄り ちゅう坊を誘惑することさえ 私は厭わなかった。
「りょ、りょうちゃん どうしたっていうの?」
そんな私の真意をわかるはずもないちゅう坊は いきなりの私の行動にただただ とまどい うろたえるばかりであった。んが これでいいのだ、ちゅう坊のとまどった行動は グリ子の目には 迫られてはっきり断れない優柔不断男に見えたはずで 案の定 グリ子とちゅう坊は その後しばらく 夫婦仲が冷えたのだった。
作戦は予想どおりに成功を収めたんである。
「おばちゃん すごい作戦だねぇ 僕を弟子にしてくれない?」
ある日 あの生意気なチビがそう言いながら 私に近づいてきた。一心に作戦を遂行する私にすっかり惚れこんだのだとチビは語った。
私は声もでず ただただチビを見返した。作戦だと見抜いたのに驚いたのと こんな作戦を実行するハメになった そもそもの原因に すっかり尊敬の眼差しを向けられるとは 非常に複雑な気持ちがしたからだ。
しかし 尊敬をかちとった若い衆を味方にしておくのは 後々の為にも決して損ではないし 私の作戦を見抜くとは 見所もある、と私は冷静に分析した。
「わかった弟子にしてあげよう」
と私は言った。
「ほんとに!おばちゃん!?」
「ただし 条件がある。あんたの兄ちゃんと姉ちゃんも、私に弟子入りするよう 説得すること、わかったね?」
「うん わかった、仲間に引き入れる、約束だよ!」
そうして 私と若いいんこ衆連合が形成されたんである。巣立ってしまえば、いんこに親子の関係はない。力が余ってるチビギャングを利用するのだ。私って策士だな。
若いんこどもの使命は、ターゲットである両親の仲を邪魔することである。
再び開始されたこの妨害工作は しかし 結果的に グリ子の恋心に火をつけてしまった。ほれ 障害の多い恋ほど燃えるってやつだ。グリ子は やっきになって ちゅう坊との仲の修復にとりかかり始めた。負けず嫌いな性格って ほんとめんどい。んが 若さと数で圧倒する我々が 二羽の恋路を粉砕するのは 時間の問題であった。
二羽が巣引きの準備を始めると 我々はとことん邪魔をしまくった。いちゃつく二羽の間に突進し ちゅう坊の愛の吐き戻しを奪い取ったのである。そのあまりの迫力に ちゅう坊は 恐れをなして 吐き戻しをしなくなり 吐き戻しの楽しみを奪われたグリ子は激怒した。
「あの連中に邪魔されて びびるあんたなんか 大っ嫌いよーーー!」
ボカッ!グリ子がちゅう坊を蹴り飛ばした。
ものかげから覗いていた私は「ヨシ」とつぶやいて ほくそえんだ。これで私のいんこ的地位も安泰だ、ふっふっふ。
飼い主と例の彼氏さんが 一年をかけて ようやくお互いの気持ちを確認しあう段階に到達した、ちょうどその頃のことであった。
(つづく)
チビッコギャングが誕生した時はどうなるかとおもったけど
弟子になるとは思ってなかったなぁ~
たくさんのいんこな日々の世界観に書き手冥利につきます。
いんこの愛情は、人間同様様々です。
一途な愛もあれば、あっさりしたのもあれば
不毛な愛もあれば、ほんわかあったかな愛もあります。
いんこの愛を語らせたら一晩でおさまりがつきません。
見ていてほんと面白いです。
鳥にもちゃんと愛があるのかなぁ~ どんな障害にもまけないとか?
昨日の敵は今日の友…ならぬ弟子!?
意外な展開ですねΣ(◎_◎;)
わぁ、ますます続きが気になります!!
はやく明日になぁれ。
それとも籠のかなの生活ゆえの恋愛期間なのかしら?
気になる今後だわ、鳥も人間も・・・・
チビもいぃですねぇ。弟子とは…つかえるな。おぬし、なかなかわるよのぉ…フォッフォッフォ…
びびる彼氏…いや、お父さんは、ちょっと…
奥様!お強いです。