以前書いた物語 いんこな日々-第11章-(前編)
- カテゴリ:小説/詩
- 2009/11/15 00:14:26
11章 恋の始まり(前編)
いつもの通り 夜 飼い主が帰ってくる時間、ドアの向こうでガチャガチャ鍵を開けるまでは いつもの手順だったが
「どうぞ 入って」
という声。どうやら 飼い主一人でない模様。
灯りが点いて 私らいんこが まぶしそうに頭を上げると人間の若い男が目の前に出現しておった。飼い主に彼氏が出来ていたっつう私の勘は やっぱり当たっておったのだ。
それにしても ちょっと黒づくめな感じの衣装は いんこには威圧感あるから…ほら、ね。
「きょ?きょ?…ぎょえ~~~~~っっっ!!!」
オカメのグレ子が悲鳴とともにかごん中で暴れだした。オカメパニックである。
「うおっ…どうしよう、なんか暴れてるよ」
オロオロとしたその口調 むう、あんまりいんこ慣れしておらんな、と私はチェックを入れた。
「グレ子、わかった わかった 落ち着こうね」
飼い主が素早く かごの中のグレ子を掴むと 両手で包むように抱っこした。グレ子の恐怖の波が さっと引いていくのが傍目にもわかった。さすがに手慣れておる。飼い主は グレ子を抱っこしたまま 男に向かって
「これがオカメインコのグレ子。すごい怖がりなの」
「あと こちらがセキセイ。ちゅう坊とグリ子とりょうちゃん」
と私らいんこを紹介しているが あのね。んで この男の紹介は?やっぱり私達には 紹介なしかね?
「オカメインコってのは 初めて見た…小さい頃 実家で飼っていた鳥 セキセイだったから なつかしいな。こんな感じの緑色の鳥だったよ」
男はグリ子を指差して 飼い主の方に振りかえった。指をさされたグリ子にもさっと緊張が走った、目が小さく からだがこわばっている。っんとに 内弁慶なやつらだなぁ。
んが いんこ達の緊張もどこ吹く風で 飼い主と黒服男はすっかり 二人の世界を構築しつつあった。飼い主が、男に話しかけた。
「あの、コーヒーでも飲む?」
「え?いいの?嬉しいな」
飼い主の声が ドギマギしているのがわかるのは 元人間ゆえかもな。そっか 彼女を好きなわけね、この男?飼い主は落ち着きを取り戻したグレ子をかごに入れると、コーヒーの準備をするのに部屋を出て行った。台所からお湯の沸く音がシュンシュンきこえてきた。
改めて私は 男をまじまじ見つめた。黒いコートは威圧的だったが 顔はおとなしめ、ちょっと弱気な感じさえする。頭のちょっといきがったツノツノヘアーは顔に似合ってないから減点対象だが、まぁまぁ 合格点あげとくわ、と判断を下す。飼い主も おとなしい性格だし 並んでる感じが雰囲気よさげではある。
男は 三つのかごを交互に眺めていたが オカメのグレ子は鼻息荒いし セキセイの他の二羽も 警戒警報は解除できないでいるらしく 興味津々で男を眺めている私が どうやら気に入ったらしい。男は私に向かって語りかけた。
「動物の話題振って 正解だった、鳥飼っていたとはなぁ。どうりで遊びに出かけても そそくさと帰るわけだ。『鳥 見たいな』は ここに来るいい口実になったよ、とりあえず一歩前進だ、うん」
ほぉ~~、私らを おとりにしたわけね、くだらんギャグ、減点一だわ。
利用したっていいんだけど 後々 変に嫉妬しないでよね?
「僕と鳥と どっちが大事なんだ?」
なぁ~~んて言うんじゃないわよっ!…ちょっと気を回しすぎかしらね(汗)
飼い主がマグカップに入ったコーヒーを二つ抱えて 部屋に戻ってきた。
「熱いから気をつけてね」
とか言いながら 男に一方を手渡す。二人はコーヒーをすすりながら沈黙した。ねぇ あんた達 今日これからどうするつもりなの?もしかしてっ!このまんま泊まるのかしらっ!?
そうよ、そうよね この展開なら そうくるわよね。
この沈黙って 次はガバッと手を握るなり キスするなりの前段階かしら?ワクワクするわ~っっ。あぁ 元人間だったからついつい想像が暴走しちゃうのよね。
その点、横にいるいんこ達は気楽よね、元からいんこだから人間の惚れたはれたなんて 全く 興味も湧かない問題だ、というか まだ緊張しているの、あんた達?
「コーヒーごちそうさま。じゃ 今日は帰るよ」
あっさりと男は立ちあがった。
あら?帰っちゃうの、なぁんだ 若気の至りで突っ走るのかと思って期待してたのに 拍子抜けだ。
(つづく)
えーっ、ひとつ片付いたと思っていたら、今度はこっちの恋ですかΣ(◎_◎;)
元人間であること+飼い主さん関連…それは気になりますよね!!
私もPCごしではありますが、楽しみに見守らせていただきたいと思います❤
妙に勘ぐってしまう私は・・・かわいげない?
長生きしすぎたかしら(^_^;)
オカメパニックかぁ~
よくよく考えたら小さい頃緑色と水色のインコ飼ってた
あとそういえばメジロ飼ってたの思い出した