Nicotto Town ニコッとタウン

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楽しい「寄り道」


春の終わりだった。

夕方まで海を見て、帰り道をのんびり走っていた。

窓を少し開けると風が気持ちよくて、ラジオからは懐かしい曲が流れている。

助手席の彼女は、

「食べすぎた〜」

と笑ったあと、シートを倒して眠ってしまった。

穏やかな一日だった。

運転手も機嫌がよく、赤信号で止まるたびに彼女の寝顔をちらりと見ていた。

日が暮れ始めた頃だった。

「次、右」

彼女が言った。

目は閉じたまま。

寝言かなと思ったが、妙にはっきりしていた。

「その先、左」

運転手は少し笑う。

「夢の中で運転してるのか」

返事はない。

彼女は眠ったままだ。

だが次の交差点でまた、

「まっすぐ」

と言う。

不思議だった。

けれど、なぜか従ってしまう。

気づくと見知らぬ道だった。

街灯は減り、人家もなくなる。

ラジオには雑音が混じり始めた。

「あと少し」

彼女が言う。

初めて聞く言葉だった。

そして車は、崖の手前で止まった。

運転手は急ブレーキを踏んだ。

ライトの先には何もない。

あと数メートル進んでいたら落ちていた。

心臓が激しく鳴る。

慌てて彼女を起こした。

「おい!」

彼女は目を覚まし、

「着いた?」

と眠そうに笑った。

事情を話すと、

「え、私ずっと寝てたよ」

と首をかしげる。

嘘をついているようには見えない。

運転手は黙って車をUターンさせた。

帰ろう。

そう思った。

その時、彼女がフロントガラスの外を見て固まった。

「ねえ……」

声が震えている。

「どうした?」

彼女は崖の下を指差した。

「なんで……」

「なんであそこに、私たちの車が落ちてるの?」

二人とも、その後しばらく動けなかった。

崖の下には、

フロントガラスの割れた同じ車があり、

運転席と助手席には、









こちらを見上げる二人が座っていた。

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