湿気対策について⑫
- カテゴリ:日記
- 2026/05/15 12:05:27
*ヒートアイランド緩和に
なごミスト開発の第一の目的は、都市のヒートアイランド化を緩和することです。『水の文化17号』で、「汚れた水は自分で処理」と書いてありますが、下水を出すと下水料を取られるのに、クーラーの排熱を外にそのまま出してなぜ許されるのか、私にはわかりません。東京が大量に熱を使い、隣接した熊谷市が暑さでひどい目にあうのはおかしいのではないかと思っています。
一般に外気温が2度下がると、建物の空調負荷は5.6%低減され、空調機器の効率は5%向上すると言われています。この結果から言えば、なごミストが稼働しているときは、周辺の建物の空調エネルギーは約10%削減されることになります。
そこで、50m四方のオープンスペースでなごミストを使わせてくれれば、周囲の空調負荷が下がるので電気代が減ります。つまり、空間全体のエネルギー量はとんとんで、気温は35度から33度に下がります。
そのような場所を多数設ければ、熊谷に行く熱はぐんと下がるでしょう。都市の間でも、お互いに迷惑をかけるわけにはいきません。それを解消するためにミストを使ってくれとお願いしています。使う水は雨水でもOKです。
この方法によれば、全体のエネルギー消費を増やさずに都市の気温を下げることができるということで、ヒートアイランドの緩和につながります。
また、なごミストを使って局所的に気温を下げると、ダウンフロー(下降気流)が起こって、空気が動きます。京都の町家を思い起こしてください。うなぎの寝床のような奥行の長い構造の中ほどに井戸があって、ここで空気が冷やされてダウンフローが起こります。このダウンフローが表と裏の暑い外気に向かって動くことで、風が起こり涼感が生じます。つまり、なごミストは気温を下げることだけではなく、風を起こすことにも役立つのです。
住宅で使う場合は、大きい窓のある軒先の真下にミストが吹き出すようにします。ミストによる気温の抑制はいくつもの国ですでに行なわれています。
パリのポンピドーセンターの裏のパスタ屋の軒先でも使っています。ただ、問題は60気圧もかけて家でミストを作ろうとすると、かなりのコストがかかることです。これを何とか安くすることが、現在の課題です。ヨーロッパではノズルを工夫して微小粒径のミストを作ろうという系統と、水が掛かっても仕方がないという系統に分かれていて、後者はセーヌ河岸に砂浜を作るイベントなどに使われています。
面白いのは、駐車場につけてくれないかというパチンコ屋さんからの引き合いの話です。よく車に残された子供が暑さで亡くなるという痛ましい事故が報道されますが、そのような事態を防ぎたいということなのでしょうね。
*なごミストと打ち水の違い
ミストと打ち水の効果は異なります。簡単に言うと、木の蒸散量と池の蒸散量は、微風状態ですと木のほうが3倍も多いのです。ですから池のそばにいても、実はあまり涼しくありません。言い換えれば森は池の3倍のミストを吹いてくれるともいえます。そういう意味で、打ち水と森を比べると、蒸散量では森、すなわちミストのほうが効果的です。
ただし、打ち水は日射が落ちたときに行なうと地表の表面温度をぐんと下げる効果があります。ですから、打ち水をするのは日が落ちたころに決まっていて、昼間にする人はいないわけです。適切なタイミングですれば、打ち水は地面の表面温度を下げる効果が高いのです。
緑化というのはその意味で効果が高く、木を植えるのに越したことはありません。しかし、名古屋でいったら繁華街の栄にいきなり森を造るのは不可能です。なごミストはあくまでも、ヒートアイランド現象の抑制を、緑化ではない方法で行なう、都市向きの現実的な対症療法と考えてください。
*湧き水で、なごミストを運転したかった
私はセンブリの花が大好きで、道端でセンブリの花の咲く海上(かいしょ)の森で当初、愛知万博が開かれるという案には反対でした。
実は私は、反対派でもいいということで万博の企画委員を務めていて、1997年に「蚊や蠅と共生する共同住宅」という案も提案しています。
当時の建設省が主導して、跡地は住宅開発すると言っていたころに、「ビオトープを造りたいというなら、蚊や蠅と共生する気合いがないとできませんよ」と言って提案しました。これは当然のことながら、見事に落とされました。しかし自然がいいと言うのなら、メリットもデメリットも受け入れる覚悟がなければ、実際に暮らすことはできないと私は本気で考えているのです。
「2000〜3000万円のマンション代金に加えて、自分たちでも薪が取れて、手入れができるという里山の使用権(所有権はいらない)に3000万円出す人間が100人集まれば宅地開発として可能だ。最初はおれが買うから」と説明したのですが、受け入れてもらえませんでした。今なら通るかもしれませんね。
*高温多湿はいつから?
日本は高温多湿と言われますが、このような説明のされ方は、いつごろから始まったのか、ということが最近気になっています。比較対象がないのに、自分たちが住む場所を高温多湿と思っているわけがないでしょう。おそらくヨーロッパ人が日本に来てからだと思うのです。
それでも第二次世界大戦前までは、ヨーロッパ人も、例えばインドでは天井を上げ扇風機を回すなどして、風土に合わせて柔軟に気候に適応しようとしていました。
見田宗介の『現代社会の理論』(岩波新書、1996)を読んでいたら、1958年のアメリカ・タイム誌に「減税して浮いた金で、消費者が扇風機をエアコンに買い換えた」と記しているという記述を見つけました。このあたりの経緯を追いかけると、高温多湿を理由に日本がエアコン社会にシフトさせられた理由も見えてくるのではないでしょうか。ちなみに当初会場に予定されていた海上の森は、夏でも湧き水が切れない場所で、なごミストが必要とする1分当たり90リットルの水を簡単に得ることがでます。その湧き水でなごミストを動かしてみたかったですね。



























