湿気対策について⑧
- カテゴリ:日記
- 2026/05/15 11:53:25
ところが「湿気は敵」とばかりに室内の気密性を高め、冬は加湿器に頼って結露に悩む、という何とも矛盾した現象が現れた。室外空間は、室内空気のゴミ捨て場と化し、排熱によるヒートアイランド現象を心配し、打ち水をするという、これまた何とも矛盾した現象に陥っている。
湿気は、本当に敵なのだろうか。エネルギー価格の高騰・枯渇が心配され、持続的なエネルギー利用が真剣に議論されている今、湿気をむしろ友と意識転換して、衣服、室内、まち、それぞれの気候を調和させることを考える時期に来ているのではないだろうか。
湿気文化の国・日本で、湿気を敵と見た「勝手な空調文化」の歴史は、たかだか30年余りに過ぎない。「湿気と折り合う文化」の長き歴史の智恵を活用して、都市の在り方から一人ひとりの暮らし方まで見直すときが来ている。
自分の口に入るものや着るものの吟味といった個から始まる見直しが、家やまちのしつらい、そして気候にまでひろがったとき、「湿気と折り合う文化」の新しい姿が見えてくるかもしれない。
日本にいると、否応なく向き合わなくてはならない湿気。では、湿気はどのような形で、私たちの暮らしにかかわっているのでしょうか。身近かなところに存在する湿気を取材しに、まちに出かけてみました。
【電気式海苔乾燥機の出番はいつ?】
湿気を感じるとき?
やっぱり、梅雨の時期だねえ。
正式な梅雨入りかどうかじゃなくて、奥からこいつ(電気式海苔乾燥機)を出してこよう、という気がするときが、湿気を感じるときだな。一年中は、使っていないよ。梅雨から夏の間だけ。秋になって、空気が乾いてくると、ただの海苔の缶に変える。
昔は炭で、いちいち焙っていたんだよ。炭火が一番で、次が電熱器。ガスは焦げやすいからダメだなあ。高級な寿司屋は、今でも炭火で焙ってるんじゃないの。そりゃあ、そのほうがおいしいもの。もちろん、焦げないようにうまく焙んなきゃダメだよ。
海苔の裏どうしを2枚合わせて、端を持ち、手で持った反対側の隅を焙る。焙りながらひっくり返していくと、ほら、8回で全部の面が順繰りにきただろう、わかるかい?
パリパリの海苔を使ったって、ぐずぐずしてたら湿気ちゃう。海苔巻きは巻き簾の上に海苔を置いて、寿司飯を広げ、ネタを載せて巻くんだけど、海苔が湿気ないように、寿司飯を浮かせたいような気持ちで巻く。寿司飯を潰さないように、スッと切って、出す。カウンターに座った一番の口福は、海苔巻きの海苔がパリッとしていることかもな。
今はクーラーで除湿もできるけど、やっぱり梅雨に入ると、ガラスケースが曇るねえ。店の内装に新建材が増えてから、結露っていうのが、余計増えたような気がするね。
(世田谷・東寿司 笛木さん)
【新蕎麦が教えてくれるさらっと感】
毎朝、挽き立てのそば粉を打ちますが、捏ね鉢に蕎麦粉を入れて水回し(蕎麦粉に水を含ませる作業)をしたときに、だいたい蕎麦粉の状態がわかりますよ。1Kgの蕎麦粉に対して500gの水が基本。うちでは器に100gの余分の水を入れ、塩梅を見ながら調整しています。
9月末になれば、ほとんどの場合新蕎麦が出回ります。新蕎麦の時期は、蕎麦粉がサラサラで、水がたくさん入ります。湿気てくると、口では説明できないけれどシトっとしますね。蕎麦粉の湿気に合わせて入れる水を調整するのは、長年の勘です。
挽き立てとはいうものの、収穫してから玄蕎麦の状態で保管しておくわけですから、少しずつ湿気を帯びてくるんでしょう。その時期から、次の収穫期までの間、蕎麦粉は少しずつ湿気ていくんです。それでも玄蕎麦の状態だと、殻があるからそれほど湿気を含みませんが、挽いたらすぐに冷蔵庫に保管します。うちは、喫茶店もやっていたからわかるけれど、コーヒー豆も一緒です。規模の大きな喫茶店は、大きな保管用の冷蔵庫を備えています。そんなに気を使っても、夏はやっぱり状態が悪い。
そう言えば、私が湿気を感じる新蕎麦前の季節は、偶然、外の湿度も高い時期と重なりますね。秋になって空気が乾いて感じるときが、新蕎麦の季節でもあるんです。
(名古屋・覚王山たか乃 安藤さん)
【蒸されて和らぐ肌とヒゲ】
美容院にとっての湿気感ですか?
それは、なんと言ってもストレートパーマです。梅雨が近づいて湿気てくると、断然ストレートパーマをかけるお客さんが増えますね。それと、カットして床に落ちた毛の掃除でも、季節感を感じます。床に張りついて、さっと掃けなくなってきたら、そろそろ梅雨だなと。
梅雨時はパーマが少しかかりにくくなるような気もしますね。湿気が増えたなと感じるのは、そんなときですが、逆に冬になって湿気がなくなっちゃうと、静電気がすごいです。髪の毛に帯電するから、スプレーで抑えます。
そうそう、梅雨になってストレートにするのは、湿気で髪の毛が縮れてまとまりにくいからですが、なぜかもう一つピークがあるんです。それが秋。秋にストレートパーマの理由は、わかりません。乾燥してきて髪がサラサラになるから、かえってもっとサラサラにしたい、と思うんでしょうか。女心はわかりませんねえ。
うちは床屋も兼業ですが、湯気を出してヒゲを柔らかくする機械を使っています。もう20年ぐらい前からありましたが、普及したのはここ10年ぐらいでしょうか。蒸しタオルでやっていたのと同じことですが、うちの機械はいろいろな部品がついて、エステでやるような施術もできるんですよ。ほんわか温かくて気持ちがいいから、リラックスするし、血液の循環もよくなって好評です。肌が滑らかになりヒゲ自体も柔らかくなって、剃刀負けがしないんです。お風呂の中で蒸された状態になるわけです。
それでもやっぱり、本物のお風呂にはかないません。ヒゲを剃るのはお風呂が一番。
(山梨・Stay-1 佐藤さん)
【あなたは、パリパリ派?しっとり派?】
コンビニエンスストアが日本にお目見えして、約30年(1974年5月、東京都豊洲に一号店)。アメリカでできたコンビニで、いつしかおにぎり開発が過熱していったのは、面白い現象です。
おにぎりといえば、家庭でつくったものであり、携帯に便利だから遠足とか野良仕事とかに持っていき、時間が経ってから食べるものだし、海苔は最初から巻いてあるから湿けっているのが当たり前でした。そんな先入観をくつがえし、おにぎりの新しい可能性を印象づけたのが、「パリパリ海苔のおにぎり」誕生です。
海苔とおにぎりをフィルムで区切り、開けた人間が自分で巻く方式は、書いてあるとおりの順番でフィルムを剥がしていっても、うまく完成できない人もいて、当初は「?」と戸惑う人が続出しました。そんな思いをしてまで、パリパリで食べたくはない、と思った人も多いはずです。今はおにぎり用のフィルムがお弁当コーナーで売られていて、自分でパリパリ海苔おにぎりをつくる人がいるほどの人気です。
しかし、そんな湿気た海苔を嫌う風潮に逆行するように、しっとり海苔を謳うおにぎりも登場。どちらもそれなりに支持されて共存しているのですから、人の食い意地の貪欲さが、たくましい商魂をしっかり支えているということでしょう。



























