仮想劇場『明日』
- カテゴリ:自作小説
- 2026/04/14 13:35:24
身勝手な理由で組織は解体され
僕らは無情にも荒れた海へと放り出された
幾人かの人がメキメキと沈没する船に取り残されたまま
助けを呼ぶ声だけが暴風雨の中にかき消されていく
無責任な指導者たちは自分たちだけの救命ボートをこしらえ
そして我先にと飛び乗り波の向こうへと旅立っていった
「なんというていたらくだ」
同じ板切れに身を預けていた老爺が嘆く
「とにかく今は泳ぎ切るしかない」
僕はそう応えて大粒の雨に叩きつけられる海面を睨んだ
いまさら恨み言なんて並べる気はさらさらないよ
船を沈めてしまった責任は僕たちにもある
これは人災であり天罰でもある
そのことだけは身に染みて受け入れなければ
これからは漂流者として生きていく
そういう選択肢を僕はずいぶん前に覚悟していた
たどり着いたとしても見知らぬ国だろう
このままあっさりと海の藻屑になるかもしれない
それでもかまわないと僕らは決めたんだろう
明日がどうあるかなんて知りようもない現実の中で
それでも今の一瞬を大切に生きていきたいともがいている
あくまで朗らかな表情で
あくまで博愛にうっすらとまかれながら
誰からも恐れられたあの虎狼はついに群れを抜け
元来のあるべき場所へと帰ることになったのである



























