Nicotto Town ニコッとタウン

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何年かぶりの発熱。

何年かぶりの発熱。

それは、忘れ去られていた小さな王国が
突如として蜂起する夜のことだ。

わたしの身体という静かな図書館で、
埃をかぶっていた禁書が
ひとりでに頁をめくりはじめる。

額に浮かぶ熱は、
古い大聖堂の薔薇窓を透かして射し込む
真紅の夕陽のようで、
内側からわたしを染め上げる。

血潮は緩やかな反乱軍、
白い舟となった細胞たちが
緋色の河を遡る。
それは戦であり、舞踏であり、
絹のドレスを裂きながら回転する
見えないバレリーナの独演だ。

喉の奥では、
かつて恋文を焼いた暖炉が
再び火を得て、
灰の底から青い炎を立ち上らせる。
言葉は蒸気となり、
夢の縁を曇らせる。

久方ぶりの発熱は、
忘れていた痛みを連れ戻す客人。
氷枕は月光の石、
シーツは雪原、
その上でわたしは
溶けかけた彫像のまま横たわる。

けれどこの灼熱は、
ただの病ではない。
深く沈んでいた感情を
金箔のように浮かび上がらせる
秘めやかな錬金術。

熱が去るころ、
わたしの内奥には
薄紅の痕跡が残るだろう。

それは、
もう一度だけ若返った魂が
密やかに押した
緋の封蝋のしるし。

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