悪役令嬢チャレンジ.2 ゾフィア編
- カテゴリ:サークル
- 2026/01/17 13:24:16
――最初に鳴ったのは、悲鳴ではない。
鉄が空を割る音だった。
祝宴の広間。
歯車の意匠が天井を巡り、淡金の酒が杯に満ちる中、城伯家嫡男はいつもの調子で口を開いた。
「君は本当に、黙って立っていれば――」
その言葉は、最後まで形にならなかった。
ゾフィアが手首を返し、閉じられた扇で、横殴りに男の頬骨を打ったからだ。
鈍い音とともに、鉄骨入りの扇はゾフィアの狙い正確に捉え、男の身体が横に吹き飛ぶ。
卓を巻き込み、杯が砕け、酒のしずくが宙に舞う。
場を沈黙が支配した。
「……ッ!」
男が起き上がろうとした時、ゾフィアは既に間合いを詰めていた。
鎖骨めがけて、扇を縦に振り下ろす。男は喉を押さえ、膝から崩れ落ちる。
「遅いですわ」
声は冷たく、辛らつだった。
「起き上がる前に、反撃なり回避なり、するべきでしたわね」
そんな言葉を口にしながら、扇を開く。
白絹は一瞬、城伯家嫡男の視界を奪い、それが再び閉じられた瞬間。
要の金属が鳩尾に突き込まれた。
男の口から言葉にならない音が漏れる。
ゾフィアは、倒れかけた男の身体の顎に向かって、もう一打。
それで城伯家嫡男は完全に沈黙した。
広間が凍りつく中、彼女は扇を軽く振り、乱れもせずに言う。
「今ので理解なさったでしょう」
鉄扇を閉じ、肩に添える。
「私は、あなたを婚約者として不快に思っています」
誰かが慌てて止めに入ろうとするが、それをけん制するように再び扇が開かれる。
「これは私事です」
翌日、城伯家の屋敷。
正門で止めに入った私兵の剣を、ゾフィアは開いた扇で受け流し、
そのまま流れるように閉じて、叩き落とす。
手首。
膝。
顎。
すべて、鉄扇一本。歩きながら、次々と。
計算はあるが、それは「どこを叩けば動かなくなるか」だけ。
「鬱陶しいですわね」
書斎の扉を、扇の一撃で開け放つ。中にいた城伯家の当主が、息を呑んだ。
「ご説明に参りました」
ゾフィアは扇を閉じ、机に置く。
「婚約破棄です」
当主が何か言いかけようとした瞬間、彼女は机を蹴る。
「回りくどい話は不要です」
淡金の瞳が、真っ直ぐに射抜く。
「息子は不適格。私は不快」
以上です、と言われた城伯家の当主は、沈黙を選んだ。
「穏便に済ませたければ、今日中に発表なさい」
彼女は扇を手に取り、背を向けた。
「さもなくば――次は、私が説明を続けます」
それが、脅しではないことを、誰もが理解していた。
数日後、婚約破棄が公表される。理由は「双方の意思による解消」。
社交界では、淡青のドレスの令嬢に、逆らうな、と囁かれた。
ゾフィアは今日もサロンにいる。
いつもの通りの儚げな佇まいで、優雅な手元で、白く長い指で。
静かに、開いて、閉じる、操作と制御を繰り返す。
「機嫌、良さそうね」
その音を聞いて、友人の一人であるクラリッサが近づいてくる。
ゾフィアは笑みを浮かべ、手元で軽やかに、音を響かせた。




























鉄扇令嬢うるわし爽快かっこよいw
使いこなしてるなああ
クラリッサがお友達、というのは、最後に思い付いて付け加えただけ~。
扇を開閉する音も〝音〟には違いないだろうと思ってw
この二人が組めば無敵じゃん(*`m´*)ノ彡☆バンバン!!
婚約者がダメダメすぎる感じですよね。
なんとなくクラリッサ嬢が動でゾフィア嬢が静っぽく感じるけど、
実際はクラリッサ嬢自身は動かずに人を動かし、ゾフィア嬢は
自分自身がめっちゃ動くのね@@
動き過ぎる気がしないでもない……^^;