Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



悪役令嬢チャレンジ.2 ゾフィア編 


――最初に鳴ったのは、悲鳴ではない。
鉄が空を割る音だった。

祝宴の広間。
歯車の意匠が天井を巡り、淡金の酒が杯に満ちる中、城伯家嫡男はいつもの調子で口を開いた。

「君は本当に、黙って立っていれば――」

その言葉は、最後まで形にならなかった。
ゾフィアが手首を返し、閉じられた扇で、横殴りに男の頬骨を打ったからだ。

鈍い音とともに、鉄骨入りの扇はゾフィアの狙い正確に捉え、男の身体が横に吹き飛ぶ。
卓を巻き込み、杯が砕け、酒のしずくが宙に舞う。

場を沈黙が支配した。

「……ッ!」

男が起き上がろうとした時、ゾフィアは既に間合いを詰めていた。
鎖骨めがけて、扇を縦に振り下ろす。男は喉を押さえ、膝から崩れ落ちる。

「遅いですわ」

声は冷たく、辛らつだった。

「起き上がる前に、反撃なり回避なり、するべきでしたわね」

そんな言葉を口にしながら、扇を開く。
白絹は一瞬、城伯家嫡男の視界を奪い、それが再び閉じられた瞬間。
要の金属が鳩尾に突き込まれた。

男の口から言葉にならない音が漏れる。

ゾフィアは、倒れかけた男の身体の顎に向かって、もう一打。
それで城伯家嫡男は完全に沈黙した。

広間が凍りつく中、彼女は扇を軽く振り、乱れもせずに言う。

「今ので理解なさったでしょう」

鉄扇を閉じ、肩に添える。

「私は、あなたを婚約者として不快に思っています」

誰かが慌てて止めに入ろうとするが、それをけん制するように再び扇が開かれる。

「これは私事です」

翌日、城伯家の屋敷。
正門で止めに入った私兵の剣を、ゾフィアは開いた扇で受け流し、
そのまま流れるように閉じて、叩き落とす。

手首。
膝。
顎。

すべて、鉄扇一本。歩きながら、次々と。
計算はあるが、それは「どこを叩けば動かなくなるか」だけ。

「鬱陶しいですわね」

書斎の扉を、扇の一撃で開け放つ。中にいた城伯家の当主が、息を呑んだ。

「ご説明に参りました」

ゾフィアは扇を閉じ、机に置く。

「婚約破棄です」

当主が何か言いかけようとした瞬間、彼女は机を蹴る。

「回りくどい話は不要です」

淡金の瞳が、真っ直ぐに射抜く。

「息子は不適格。私は不快」

以上です、と言われた城伯家の当主は、沈黙を選んだ。

「穏便に済ませたければ、今日中に発表なさい」

彼女は扇を手に取り、背を向けた。

「さもなくば――次は、私が説明を続けます」

それが、脅しではないことを、誰もが理解していた。

数日後、婚約破棄が公表される。理由は「双方の意思による解消」。
社交界では、淡青のドレスの令嬢に、逆らうな、と囁かれた。

ゾフィアは今日もサロンにいる。

いつもの通りの儚げな佇まいで、優雅な手元で、白く長い指で。
静かに、開いて、閉じる、操作と制御を繰り返す。

「機嫌、良さそうね」

その音を聞いて、友人の一人であるクラリッサが近づいてくる。
ゾフィアは笑みを浮かべ、手元で軽やかに、音を響かせた。

#日記広場:サークル

アバター
2026/01/18 22:26
これめっさおもしろい
鉄扇令嬢うるわし爽快かっこよいw
使いこなしてるなああ
アバター
2026/01/17 21:50
アクション多めの婚約破棄でした _(L〃_ _)ノシ バンバンバン‼

クラリッサがお友達、というのは、最後に思い付いて付け加えただけ~。
扇を開閉する音も〝音〟には違いないだろうと思ってw
アバター
2026/01/17 21:22
クラリッサとお友だち(。☉_☉)??
この二人が組めば無敵じゃん(*`m´*)ノ彡☆バンバン!!
アバター
2026/01/17 19:05
口ではダメだと思ったから手が出た、って事なんでしょうけど。
婚約者がダメダメすぎる感じですよね。
アバター
2026/01/17 15:25
クラリッサ嬢と友達なのか~
なんとなくクラリッサ嬢が動でゾフィア嬢が静っぽく感じるけど、
実際はクラリッサ嬢自身は動かずに人を動かし、ゾフィア嬢は
自分自身がめっちゃ動くのね@@
動き過ぎる気がしないでもない……^^;



月別アーカイブ

2026

2025

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.