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「七草粥について⑭」

また、秋には「秋の七草」が存在するが、これはお粥にして食すものではなく、月見などの際に飾って、目で見てその美しさを愛でるもの。ハギ(萩)、ススキ(薄)、クズ(葛)、ナデシコ(撫子)、オミナエシ(女郎花)、フジバカマ(藤袴)、キキョウ(桔梗)の7種を指す。

「地域による違いは?」
上記で紹介した7種の野草が入ったものを一般的に七草粥というが、地域によっても違いがある。代表的なものをみてみよう。

「けの汁」
青森県津軽地方では、1月15日頃の小正月に「けの汁」を食べる。けの汁とは、昆布でとった出汁をベースに、細かく刻んだダイコン、ニンジン、ゴボウ、わらびなどを入れて煮込んだ料理だ。名前の由来は、「粥の汁」が次第にけの汁と呼ばれるようになったといわれている。冬の寒さが厳しく、降雪も多い地域は七草を摘むことができなかったことから、1月7日に七草粥を食べる風習がない代わりに、けの汁を小正月に食べることで七草粥と同じく無病息災など1年の安泰を願う。秋田県の一部の地域でも、同じような汁物を飲むそう。

「納豆汁」
山形県村山市周辺では、1月7日に七草粥ではなく「納豆汁」を食べる風習がある。すりつぶしてペースト状にした納豆のほか、ニンジン、ゴボウ、油揚げ、こんにゃく、ずいき(サトイモやハスイモなどの葉柄)などが入った具だくさんの汁物だ。この地域も七草を摘むことができなかったことから、いわゆる「七草」を使わずに作る汁物が伝わっている。

「ぜんざい」
1月7日にぜんざいを食べるのは、石川県輪島市。お正月に飾った鏡餅を入れたり、丸餅を入れたりして、小豆の甘いぜんざいにする。輪島市のなかでも一部の地域では、1カ月遅れの2月7日に月遅れのお正月行事としてぜんざいを食べるそうだ。また、富山県富山市にも月遅れで2月15日に煮た切り餅に小豆の甘い汁をかけたぜんざいを食べる地域がある。静岡県、佐賀県でもぜんざいを食すところがあるそうだ。

「菜飯、まぜめし」
茨城県稲敷市、千葉県八街市の一部地域などは、1月7日に小松菜や高菜を混ぜ込んだ菜飯を炊く。特に茨城県では、お正月は7日を過ぎるまで青菜を食べない、という風習がある地域もあり、7日に菜飯を食べるといわれている。さらに栃木県日光市周辺は、1月15日まではお粥を炊くことは禁忌とされており、1月7日には青菜や油揚げ、しいたけ、かんぴょうなどが入ったまぜめしを食べる。

「おひたし、白和え 」
香川県三豊市では7種類の青菜(大根、カブ、ネギ、春菊、白菜、水菜、高菜)をおひたしにしてそのまま食べる。もしくは味噌雑炊にする場合も。青菜を食べることは、「菜食う」は「泣く」に通じて縁起が悪いとされ、「なぬかび」と呼ばれる7日に避けていた青菜を初めて食べるそう。さらに、香川県東かがわ市では、旧暦1月6日の夜に、神に米と神酒を供え、裏返した鍋蓋の上に茹でたほうれん草を、すりこ木を東向きに横たえる。翌7日に米を炊き、ほうれん草は白和えにして食べる。また、小豆島には青菜と油揚げを味噌和えにして食べる風習があるそうだ。徳島県鳴門市では、ゆでた七草を白みそ、ゴマ、砂糖で和えて食べる。

「七草雑炊、七草汁」
熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県などの九州地方の一部の地域や、愛媛県東温(とうおん)市、高知県南国(なんこく)市などでは、七草をお粥ではなく雑炊にして食べる。また福岡県などを中心に、味噌汁に七草を入れたり、七草とあわせて鯨やブリをいれて味噌仕立ての汁物にするところもある。

「たーんむにー」
沖縄県糸満市では、田芋を煮て砂糖で練った「たーんむにー」というものを食べる。また瀬底島(せそこじま)では大麦と豚バラ肉、エンドウマメ、ニンジン、味噌、ニンニクの葉を煮た雑炊を、宮古島では粟と豚肉や野菜の入った雑炊を食べる風習がある。
七草粥といっても、餅を入れたり、味噌仕立てにしたり、肉や魚をいれたり、はたまたお粥ではない地域もある。日本各地、それぞれに伝わるものはさまざまだが、1年間の無病息災を願うという意味はどこでも共通しているようだ。

「五節句に食べるものとは?」
七草粥が「人日の節句」の食べ物であるなら、その他の節句ではどんな料理を食べる風習があるのだろうか?日本には節句や行事と結びついた行事食が数多ある。
春のお彼岸にぼた餅を、秋のお彼岸におはぎを食べる風習もそのひとつであるし、近年は、西日本の風習だった「恵方巻き」が全国で食べられるようになるなどの変化も見られる。
旬の食材と結びついた季節感溢れる行事食は、守るべきしきたりというよりも、四季の変化を愛でる日本らしい食の愉しみでもある。七草粥を機に、五節句それぞれの行事食を知り、自分の暮らしにも取り入れてみよう。

「桃の節句」
人日の節句の次に来るのは、3月3日の「上巳(じょうし)の節句」。「桃の節句」ともいわれる。今では女の子の成長を願う「ひな祭り」として定着している。この日は、縁起のよい具材(エビ、レンコン、豆、干し椎茸、かんぴょうなど)を入れたちらしずし、夫婦円満の象徴である二枚貝のハマグリなどを食卓に並べるのが一般的。また、よもぎ餅、引千切(ひちぎり)、ひなあられ、ひし餅などがひな祭りのお菓子として知られる。

「端午の節句」
5月5日は「端午の節句」。「重五(ちょうご)の節句」や「菖蒲の節句」ともいい、男の子の成長を願う。現在は「こどもの日」として祝日にもなっている。端午の節句の食べ物といえば、粽(ちまき)。特に西日本で盛んな風習で、中国由来の行事食だ。関東地方では主にかしわ餅を食べる。地域によってはかしわの葉のかわりに山帰来(さんきらい)の葉を用いるところもある。

「七夕の節句」
7月7日は「七夕の節句」、または「笹竹の節句」。織姫と彦星の物語で知られるが、この年の豊作を願う節目でもある。七夕といえばそうめん。そうめんを食べる風習は、江戸時代には広く行われていたそう。この季節に行われる小麦の収穫に感謝するため、そうめんの流れる様子が天の川に見えることから、そうめんの細い麺を織姫が紡ぐ糸に見立てて、などの説がある。

「重陽の節句」
9月9日は「重陽の節句」。現在の暦では10月の半ばにあたる日取りで、日本では「菊の節句」「栗の節句」ともいわれる。また、稲刈りの時期にも当たる地域では「刈り上げ節句」ということも。
食用菊を使った料理、栗ご飯、秋ナスを食すほか、菊を模した上生菓子「着綿(きせわた)」もこの季節のものだ。
 
「七草粥をきっかけに、日本の風習に親しもう」
一杯のお粥の背景をひもとくと、かくも奥深き日本古来の風習を知ることができる。時を越えて受け継がれてきた日本のならわしと、そこに込められた先人の思いを、季節の食べ物をいただく喜びとともに感じてみてはいかがだろうか。


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