北海道猟友会 クマ出没も発砲拒否OKに
- カテゴリ:ニュース
- 2025/08/22 14:26:51
クマ出没しても発砲拒否OK 北海道猟友会が支部に苦渋の通知へ (毎日新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c709b44188bfe9c6233f90f47ac89150a49ab47
市街地におけるクマ駆除に関するFAQ
近年、市街地でクマの出没が増加し、駆除をめぐる議論が活発になっています。このFAQは、多くの人が抱く疑問に答え、その背景にある法制度や社会的な課題を解説します。
Q1:なぜ日本で市街地に出没したクマの駆除を、警察や自衛隊ではなく民間のハンターに頼るのですか?
A1: 市街地に出没したクマの駆除を民間のハンターが担う背景には、いくつかの要因があります。
法制度上の役割分担: クマは「鳥獣保護管理法」によって野生鳥獣として管理されており、その駆除は原則として狩猟免許を持つ民間ハンターや、許可を受けた者に委ねられています。警察は治安維持、自衛隊は災害派遣が主な任務であり、野生動物の駆除は専門外です。現在の法律では、公的機関が駆除の主体として想定されていません。
専門性と装備の不足: 民間のハンターは、クマのような大型獣を安全かつ効果的に仕留めるための猟銃(ライフルや散弾銃)と射撃技術を持っています。一方、警察官の装備は拳銃が主であり、クマを即座に仕留めるには不向きです。不完全な命中ではクマを刺激し、逆襲を誘発するリスクがあります。自衛隊は重火器を保有しますが、市街地での使用は二次被害の危険性が高く、また野生動物対応の訓練も不足しています。
運用の現実: 警察はクマ出没時、避難誘導や交通規制などの支援はしますが、直接的な駆除はハンターに委ねるのが一般的です。過去には警察が拳銃で対応を試み、失敗した事例もあります。自衛隊がクマ1頭の出没で動員されることは極めて稀です。
これらの理由から、現状では民間のハンターへの依存が続いています。
Q2:警察は市街地での拳銃使用に慎重なのに、なぜハンターには市街地での猟銃使用を許可するのですか?
A2: これは、装備の特性、専門性の違い、そして法制度上の役割分担によるものです。
警察の拳銃の制約: 警察官が所持する拳銃は、人間相手の制圧を目的としており、威力や射程が限られています。クマを即座に仕留めるには不向きで、誤射や跳弾による市民への危険も高いため、厳格な発砲基準が求められます。
ハンターの猟銃と専門性: ハンターは野生動物の駆除に特化した猟銃を使用します。これらはクマを効果的に仕留める十分な威力と射程を持ち、ハンターは長年の経験から安全かつ効果的に駆除する専門知識と技術を持っています。
法制度上の役割分担:「鳥獣保護管理法」は、野生動物の管理・駆除をハンターに委ねることを基本としています。2025年9月1日から施行される「緊急銃猟」制度は、ハンターの専門性と装備が駆除に適しているという認識に基づき、市町村の判断で市街地での猟銃使用を特例的に許可するものです。
このように、警察は治安維持の観点から市民の安全を最優先し拳銃使用を制限する一方、ハンターは野生動物駆除の専門家として役割を担います。
Q3:民間ハンターがクマ駆除にあたる際の報酬や補償の現状はどうなっていますか?
A3: 報酬や補償は非常に不十分であり、これがハンターの意欲低下と駆除体制の脆弱化を招く大きな要因となっています。
低報酬または無報酬: 多くの自治体では、クマやイノシシの駆除に対する報酬が低額(1頭あたり数千円~2万円程度)です。交通費や弾薬代が自己負担となることもあり、命の危険を伴う活動に対して割に合わないと感じるハンターが多いのが現状です。
負傷時の補償の不備: 駆除活動中にハンターが負傷した場合、公的な補償制度は明確に定められていません。一部の保険が適用されることはありますが、治療費や休業補償を十分にカバーしないことが多いです。公務員に適用されるような手厚い補償は、民間ハンターにはありません。
責任リスクの不均衡: 市街地での駆除により、流れ弾や物損、人身被害が発生した場合、補償制度が未整備なため、ハンターが個人で民事・刑事責任を問われる可能性があります。
これらの状況から、北海道猟友会は、補償制度の不備が解消されない限り、ハンターが駆除要請を拒否できる方針を打ち出しています。
Q4:ハンターが駆除活動中に誤って建物などを損壊した場合、誰がその責任を負うのですか?
A4: 現在の法制度下では、その責任はハンター個人に問われるリスクがあります。
現行制度の不備: 2025年9月施行の「緊急銃猟」制度でも、建物や物の損壊に関する補償制度は明確に定められていません。万が一、発砲により他人の財産に被害が生じれば、ハンターが民事上の損害賠償責任などを問われる可能性があります。
過去の事例: 2018年、北海道砂川市でヒグマを駆除したハンターが、発砲の方向が建物に向かう可能性があったとして猟銃所持許可が取り消され、裁判に至りました。これは、自治体や警察が責任を明確にせず、ハンター個人が責任を負うことになった典型的な事例です。
ハンター側の懸念: このような責任リスクを理由に、北海道猟友会は2025年8月に「発砲要請を拒否できる」と通知しました。
Q5:クマ駆除におけるこれらの課題を解決するための具体的な対策は何ですか?
A5: 課題解決のためには、多角的なアプローチが必要です。
補償制度の整備: 駆除に伴う物損・人身被害について、自治体が補償する制度を明確に確立し、ハンターの責任リスクを軽減することが急務です。
報酬の適正化: 駆除報酬を大幅に引き上げ、交通費や弾薬代などの実費を全額支給することで、ハンターの経済的負担を減らし、活動意欲を高める必要があります。
公的機関の役割強化: 警察や自治体に野生動物対応の専門チームを設置し、専用の装備や訓練を整備する検討が必要です。
予防策の強化: クマの出没自体を減らすため、電気柵の設置やゴミ管理の徹底など、根本的な予防策を強化することが不可欠です。