Nicotto Town



さよならの多重比喩(喪失の夜に)


さよならは、時計だった。
針が進むたびに、あなたの不在が確かになっていく。
時は残酷に、思い出だけを正確に刻んでいく。

さよならは、枕だった。
夜ごとに形を変え、あなたの温もりを探す。
涙が染み込んで、眠りは浅く、夢はあなたに届かない。

さよならは、食卓だった。
向かいの席が空っぽのまま、湯気だけが虚しく立ちのぼる。
箸を持つ手が震えるのは、空腹ではなく孤独のせい。

さよならは、声だった。
留守番電話に残った最後の「気をつけてね」が、
何度も再生されては、胸を締めつける。

さよならは、涙だった。
流れても流れても、あなたには届かない。
それでも、流すことでしか、あなたを抱きしめられない。

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