Nicotto Town



時の流れ






心の奥深くで軋むように
何か開く音がする
松明(たいまつ)が地面に落ち
かすかに残っていた夢が消える

螺旋階段を静かに下りた暗やみの底で
男は携帯電話を握りしめて倒れていた
彼の見ていた画面の奥には
星と同じほどの深遠さが潜んでいたのか
闇は星を見ようとする者をやさしく引き寄せる
明るい場所では星は見えないよ
こちらへおいで と

老人たちの信じていた丈夫な大地は
人々を慰め癒してきた
平らかな大地は地平線までも続く
そのどこかに仕掛けられた死が地雷のようにうずくまり
人の足裏がそこにたどり着くのを待ちわびているにしても
遠いものを見ようとして
ときに人は足を踏み外す

吸い寄せられるような暗闇は
目的を見失った人には
目的を持つ意味さえ洗い流す
時間という価値
取引される時の流れが沈殿する
そのことのない日々を
時々恥じて
私は生きている







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