小さな朝
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/07/31 22:04:32
いい夢を見ていて目覚めたら
もう一度目を閉じて
その夢を見にいくと
君は言う
明け方が寒いほど
美しい夢に戻れるのだと
羨ましいなと僕は言い
8歳の娘は嘘だとはやし立てた
でも、時として真顔で君に
どうすれば楽しい夢に戻れるの? と尋ねる
一度見た夢には必ず戻っていける
一心にその夢の続きをみようとして
山の細い小路を分け入っていくように
そうすれば必ずいけると君は答える
夢はね、楽しければ楽しいほど
思い出せないようになっているの
楽しい夢の続きを見たいという幸せな気持ちが
布団のぬくもりのように残っていたら
君の寝顔が微笑んだ
私がその寝顔に見とれているのを
知っているかのように
もう一度微笑んで寝返りを打った
その寝返りの向こうに
小さな朝が生まれるところだった