Nicotto Town



指の折れる音


誰かの声が届くたび、私はその音の輪郭を銀の解剖刀でなぞるようにして受け取る。
あまりに柔らかく、あまりに近く、その熱は、血ではなく毒のように肌の裏側を這ってくる。
そして私は知っている。
ふれるより先に、身を引いた方が美しいということを。

人の眼差しが花であるなら、それは咲いた瞬間に腐臭を孕む罠だ。
魅了される前に見抜かねばならぬ。
その奥に潜む執着や、哀れみや、下劣な真心を。

だから私は、寄ってくる優しさの手首を、微笑の下で静かにへし折ってしまう。
刃物のような沈黙を返すことで、私という温室の扉は守られてきた。

けれど──ある晩、夢のなかで誰かの声が私の名を呼んだ。
私は目を閉じたまま、その声のかけらに唇を寄せた。
それは冷たく、湿って、まだ誰のものでもなかった。

目が覚めたとき、私は静かに思った。
あの声が誰のものでもないうちに、私はそれを壊してしまいたいと。

私が守ってきたものは、決して“触れたくなかった”からではない。
ただ──
触れてしまえば、私が砕けてしまうことを知っていたのだ。


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2025/07/17 08:07
気持ちを抑えきれなくなりそうで怖い感じかな。
だったら初めからそうならないように美しいものは美しいままで…。
少し切ないかもだけど、またそれも愛なのかもしれませんね。



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