Nicotto Town



故郷






「わぁ、きれい!海が燃えているわ!」

「あなたはこんなきれいな夕日が見えるところで育ったのね!」

天気が良ければ夕日はいつも見える

しかし、季節や風次第で海の表情は異なる

「そんなこと考えたこともなかった!」

周りの全てを強烈な赤に染めていく夕焼けは好きだ

恥ずかしそうに静かに沈んでいく太陽も好きだ

海は一日として同じ顔を見せない


「君の故郷の雪も綺麗じゃないか!」

「春が好き!」

「ぼくも!」

「雪が解けて木々が顔を出すの!」

「長い冬からの開放だね!」

「ちがうの!」

「・・・・・・」

「雪の重さで枝が折れ、多くの木はとっても傷ついてしまうの!

それでも、春を迎えて悲しんではいられない!」

君は雄弁だった

「北国の人は雪が好きって言うけど、好きでないと生きていけないから・・・

本当に嫌いな人は雪国を捨てるわ・・・」

僕たちは、共に感じ、共に呼吸し、共に眠った

「手を離さないで!」それが君の口癖だった

その君が手のぬくもりを残して・・・


季節が変わりまた春を迎える

僕は君の故郷にいる

目に映る山も、野も、空も川も、木も、草も、空気さえも

君と見た自然

遠くの山の雪も、まだ冷たい風も、そして夕日も 自然のあらゆるものが君につながる

君が見た、聞いた、感じたことが僕には・・・


僕が手を離してしまったんだね

こんな恵まれた自然の中で育った君を

僕は都会へ連れ出してしまった

君と自然を引き裂いた

君はいつも不安の中にいたんだね

かけがえのない君を・・・




 





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