Nicotto Town



曇った文明の一部屋





僕の手が伸びていって

見たことのない星をそっと捕まえた

すると手は緩やかな灰色の坂になり

ぼんやりとした義務感に強いられて

僕はその坂を上りはじめた

 

坂の中ごろで降りてくるあなたに出会った

坂の上に何かあるのかと訊くと

一言あなたは「夢」と言って静かに微笑んだ

不安のない笑みを僕は初めて見たような気がする

嬉しくて長い坂を降りていくあなたの後を

何通もの手紙に追いかけさせたが

途中ですべて見えなくなってしまった

あなたはそんなことも知らず

霧でかすむ地平線に姿を消した

僕は狂うように叫んだが

空間の広がりの中にその声は吸い込まれていった

しかし、その叫びの影が赤々と

僕の行程を照らし出す

突然 僕はその明るさに目がくらみ

まっさかさまに堕ちていった

 

坂から遠ざかるにつれて

「夢」というあなたの一言が心の中に広がっていく

僕が落下する速さに慣れたころ

世界ははっとするような

曇った文明の一部屋に変貌を遂げていた





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