曇った文明の一部屋
- カテゴリ:日記
- 2025/06/19 22:52:08
僕の手が伸びていって
見たことのない星をそっと捕まえた
すると手は緩やかな灰色の坂になり
ぼんやりとした義務感に強いられて
僕はその坂を上りはじめた
坂の中ごろで降りてくるあなたに出会った
坂の上に何かあるのかと訊くと
一言あなたは「夢」と言って静かに微笑んだ
不安のない笑みを僕は初めて見たような気がする
嬉しくて長い坂を降りていくあなたの後を
何通もの手紙に追いかけさせたが
途中ですべて見えなくなってしまった
あなたはそんなことも知らず
霧でかすむ地平線に姿を消した
僕は狂うように叫んだが
空間の広がりの中にその声は吸い込まれていった
しかし、その叫びの影が赤々と
僕の行程を照らし出す
突然 僕はその明るさに目がくらみ
まっさかさまに堕ちていった
坂から遠ざかるにつれて
「夢」というあなたの一言が心の中に広がっていく
僕が落下する速さに慣れたころ
世界ははっとするような
曇った文明の一部屋に変貌を遂げていた