Nicotto Town



詩集




理由もなく古本屋で買い求めた詩集を
近くの喫茶店で読み終えると
本の上にうっすら埃がついているのに気付いた
それを掃おうとして表紙で指を切った
本屋の棚に何年も置かれていたのだろう
その汚れを気にした私の心を
静かに深く切り裂くかのように

血が滲んできたが痛くはなかった 
日常に埋没して生きている愚かさを
静かに許してくれるために
小さい傷は作られたのか
いや、そうではなく
そのような日常を是とする感傷をまとった
不遜のようなものが
きっとあったにちがいない
それをかわそうとして
何かが私の手からすり抜けていったのだ

目的もなく生きることは死を抱え込んでいる
死は眠りと似通って私を誘う
翌朝目覚めるかどうか 
ただそれだけの違いだ
夜が来れば
夢のように再び暗い波となって
私を洗い流す 










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