Nicotto Town



とはずがたり~香~その2


 私は商売柄、平日昼間に香りを使うことはない。使うとしたら夜か、休みの日くらい。平日の夜は、次の日の朝に残らない天然香料やコロンを使うことが多いし、そもそも疲れていると何も使わない。香り物は好きだけど、四六時中香ってほしいわけじゃない。一番良い香りは自然の中で感じる香りだと思っているし、近年グルマン系が増えているけど、一番おいしい香りは本物の食べ物からする香りだと思っている。

 今週はひどく疲れた。先週末の飲み会のダメージはずっと引きずっているし、畑仕事のダメージもある。精神的にも肉体的にもじんわり疲れている感じ。こんな時は香りを使わない方が、変に脳を刺激しないので、よく寝られる。

 だけど、そろそろ使いたいなと、金曜の夜に何を使おうか考える。普通の状態ならフルーティーフローラル、アクア、オゾン、グリーン。初心者日本人が大好きな香りが好きだけど、これらの香りは色彩が明るく、元気な感覚がある、音で言うならやや高音域。疲れているので少し避けたい。かといって、ここまで暖かくなると、ごりっごりのグルマン、トムフォード(TF)のロストチェリーとかBTSOのシュガーアディクトは重すぎる。ゲラン(G、帝国)も重いし、大体ウード系やインセンス系はもうこの時期暑い。香りから熱を感じて、肌が燃えるように熱い。クルジャンのバカラルージュエキストレは、私の無条件で好きなジャスミンが入っているせいか、夏でも結構使うけど、ちょっと今の気分と違う。

 バカラルージュエキストレ、組成を見ると複雑そうなのに、使うと思いっきり綿あめ調の砂糖の甘さばかり感じるのはなぜだろう。以前、ドルセーの店頭でW.Tを試した時、前評判通りバカラルージュエキストレに似ていたけど、あちらはジャスミンがしっかり効いていて、肌に沈み込み静かに香るバカラルージュエキストレは違い、沈み込む砂糖の甘さをジャスミンが反対に持ちあげて少し華やかに感じたな。

 あぁ、そんなこと考えている場合じゃない。何かないかなと適当につけてみる。リキッドイマジネールのドンローザはシャンパンとローズの爽やかさが心地よいけど、今は若干刺激が強い。今は癒しと逆方向。ミニサイズのこれは何だとラクリマを付けたら、なぜか木造校舎を思い出す。アンバーとかスパイシーとか言うけど、私の鼻では完全に木。最後に選んだイストワール ドゥ パルファンの1899、ヘミングウェイ、これが正解だった。私の鼻ではスパイシーでややフルーツの甘さと、お菓子の甘さを感じる。甘いけど甘すぎず、花の明るさはなく、熱くるしさもない。説明を見るともっと複雑だけど、そんなパーツごとに分かるわけがない。まとめて綺麗に描かれていればよし。

 香りを試すとき、濃くて複雑な香りは、マットで明度が低くて長続きはするけど、あまりそれ以上の感動を覚えない。複雑な香りでありながら透明感を維持し、香りがバラバラにならずにまとまって描く方がなんか好きだな。




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