Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第九章

彼のポケットから取り出した煙草を、…「どうぞ」と渡すと、…「吸っても…良いの?」と問いかけられた。私は、ここのマンションの一室を買おうか迷っていた為、…「大丈夫だよ」と笑い彼へと答えた。
…「一緒に吸おうか」と誘うと彼は笑いながら…「美月さんって優しいんだね」と言っていた。…そんな事を言われたのは初めてだ、と考えに耽りながら、キッチンにある私の煙草と灰皿をソファに置いた。…「そんな事ないよ」と彼へと伝えると…「うっそだぁ」とにこかに微笑む。そんな肇さんを見ていると、あまり人を好きにはならない私でさえも…素敵な笑顔だな、と引き込まれそうになる。…「嘘じゃないって…さ、煙草吸お」とライターを渡した。…「ありがとう、美月さん」とライターを受け取りながら、ほんの少し触れた指先の冷たさに…「肇さん?何か温かいもの、飲む?」と尋ねると、…「美月さんが…嫌じゃなければですけど…僕にも何かさせて下さい」とやはり「尽くす側」の人なのであろう言葉を口にしていた。…「今は、大丈夫だよ」と私はこの人の前では何故か自然と笑顔になるな、と不思議な感覚に包まれていた。…「あ、でもコーヒーとかしかないかも」と思っている事が言葉となり、呟いてしまっている自分が居た。…「コーヒー大好きだよ、僕!」と楽しそうに笑う彼に…「そう?インスタントしかないけど」と笑ってみせた。…「良いじゃん、コーヒーに変わりないよ、ふはは」と彼は素敵な笑顔を見せてくれた。…「よし、じゃあコーヒー入れちゃうね」と彼へと伝えると、…「美月さん、本当にありがとう」と小さく呟いていた。…「気にしなくて良いよ」と私は、ソファ辺りから離れ、コーヒーを入れる事となった。…「肇さんは、コーヒーどんなお味が好きなの?」と私は尋ねた。…「えっとね…お砂糖は入れないでコーヒーとミルク的な物があれば嬉しいです」…「おっけー了解」と私は答え返し、…牛乳あったっけ…と冷蔵庫を覗く。牛乳があった事に私は何だかホッとしてしまい、…「丁度、牛乳あったから、お砂糖なしのカフェオレでも良い?」と伝える。…「嬉しいです!」と言ってくれた彼に安堵し、牛乳を温め始めた。…「私も一緒に飲もっかな」と自然と笑顔になってしまう私だ。…「うん!」と少しづつ元気そうに見えた肇さんに、ホッとする私がいた。牛乳を入れレンジで温め始める。少しづつではあるが、お互いにフランクに話せるようになってきたな、私は考えながら煙草へと手を伸ばしそうになっていたが、肇さんの元へと持って行っていた事を思い出し、…寝室にある灰皿と煙草取ってこよ…と寝室へと入って行った。私の動きに特に敏感になっている様子ではない彼に安心感を抱きつつ、寝室へと煙草と灰皿を取る。少しばかり、香水が纏いたくなった私は沢山持っている香水達の中から、キャロライナヘレナを選び、ふんわりと心地の良い香りに包まれた。深呼吸するかのように深く深く呼吸をした。…良い香り…とふんわりと心地よくなった儘、キッチンへと戻って行った。寝室から出て肇さんを見ると、ぼんやりと煙を吐き出していた。




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