Nicotto Town



【小説】 初恋 その⑪ 想い出



――――現在

「クスッ。」
私は思い出し笑いをした。

「なに、思い出し笑いしてるんだよ。」
中山君が訊く。

「べ・つ・に♡」

「24年前のこと思い出してた。」

「ねえ、覚えてる?」

「卒業式の後、2階の廊下で私たちのグループと中山君たちのグループだけ、ずっと、残ってたじゃない?」

中山君は静かに横を向いて寂し気な表情をした。

中山君がポツリと言う。
「...帰れなかったんだ。」

「えっ?」
私はある予感が走った。

中山君は、黙って私を見つめる。

でも、次の瞬間、中山君の視線が私の薬指に止まる。

「いや...。」

中山君が優しい表情で訊く。
「今、幸せかーーーー?」

私は、迷わず、
「うん♡」
と答えた。

中山君の言いかけた言葉。

私があの日伝えることが出来なかった言葉。

「...帰るか。」

これからも言葉にすることはないけど、

「...うん。」

たぶん、これでよかったんだよね。

「奥さん、大事にね。インフルエンザ。」

言葉に出来なくても、

伝えられなくても、

この想いはあの日の宝物

初恋という名のーーーー

            END





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