Nicotto Town



【小説】初恋 その⑩ しずくの卒業式



――――卒業式

校庭の早咲きの桜が満開だった。

仰げば尊し~♪

「卒業証書授与!」

――――校庭

「卒業式おわっちゃたね。」
私達6人、私・麻美・幸ちゃん・ノン・よしえ・美紀たんは、校庭で集まっていた。
「帰りますか?」
ノンが声をかけた。
「6組の前の廊下、寄って帰りたいな...」
私がつぶやいた。
「そうだね。今日で最後だし、行きますか。」
麻美が賛成してくれた。

6組の前の廊下に行くと、同じように、中山君たちも8組の前の廊下に集まっていた。
私たちと中山君たち、お互い会話はなかった。

今日は『島田君の奥さん』ってからかってもこない。

自分から、中山君に話しかける勇気もない。

私は、ただ、遠目で中山君を見ていた。

「好き」の一言が伝えられずに...。

私はいろんなことを思い出してた。

『島田君の奥さん』ってからかわれてたこと。

中山君に彼女がいるって聞いたこと。

私が笹野君に告白したこと。

夏祭り、ふたりで露店回ったときのこと。

修学旅行のこと。

文化祭のこと。

体育祭のこと。

いろいろな思い出が走馬灯のように流れていった。

私が「好きです。」って伝えたら、中山君は、どんな顔する?

断られても、伝えなくても、明日から会えないことは一緒やん。
断られても、明日から会うこともないんだから、平気やん。
それでも、伝えられないでいる。
中山君の居てるとこまで、十数メートル。
こんな近くにいるのに、なんて遠いんだろう...。

「しずく?泣いてるの?」
美紀たんが聞いてきた。
「泣いてないよ。感傷にひたってただけ。」

「中山君、呼んでこようか?」
美紀たんの言葉にビックリした。

「ううん、このままでいい...。」

それから、どれくらいの時間が過ぎたんだろ。

私は帰れなかった。
麻美たちも付き合って残ってくれていた。

中山君たちも帰らずに残っていた。



学年主任の先生がきた。
「君たち、いつまでも残ってないで、帰りなさい!」

私たちは、帰ることになった。

明日からは、もう会えない!

切ない想いがあふれ出す...。

それでも想いを伝えられなかった...。




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