Nicotto Town


「さくら亭」日報


【改装】氷雪神社の巫女

画像

ああ、あそこの神社。
知ってるよ。子供の頃に行ったきりかな。
すごい古いんだってね。
うちの街の重文なんだろ?
奈良とか平安時代に創建したって。
まあ、ぼろかったよね。
お参りに行ってる奴もそういないみたいだし。
何せ、あの山奥だ。冬ともなれば雪ばっかりで。
しかも車じゃ道がないから行けないっていう。

え? すごい神社として格が高い?
そうなんだ。
どうやってあんなとこにそんな昔に建てたんだろうな。
鳥居も白い石で、ぱっと見、氷でできてるみたいに見える。
拝殿っていうの? 舞台みたいになってお参りするとこ。
木製のはずなのに白いんだよね。
へえ。あそこで神楽舞とかもするんだ。
能の奉納もあるって?
新年とかにもある?
篝火たいて?
吹き曝しだし寒そうだよな、おい。
板敷きだけど氷みたいだし、そういうのって裸足だろ?

まあ、参拝できるのってそのへんまでだろ。
本殿っていっつもああいうとこ閉まってるし。
行事は拝殿と本殿の間で行われる?
まあ、本殿って神さまの家みたいなもんだし、家の中ではしないか。

おまえ、妙に詳しいな。
え? 代々あそこの氏子やってる?
巫女さんが可愛い?
冬に行ったら甘酒出してくれる?
ふーん、じゃあ俺も行ってみようかな。
今年まだどこにも初詣行ってないし。
おう、じゃあ、明日の朝な。




以前に作った神社の鳥居だけを移設してリニューアル。
屋根が作れない(高さの問題もある)ので、
拝殿の下の方だけ作りました。
あえて木製ぽくないように白いアイテムで。
賽銭箱は頑張りました。これは賽銭箱! アイスクリームは無関係!
木の下に手水社があり、脇に境内社があります。
左手奥に社務所。

巫女さんも宮司さんも、
実はどこの誰かわかっていません。
ただずっと代々この神社を護って仕えているので、
地元の人たちは「そういうもの」と受け取っています。



神社って、こう見慣れたものがやはり自分の中ではスタンダードなので
「拝殿つくらなきゃ」って思ってしまったんです。
天井画とかもきっと描かれています。
子供の頃、地主神社の拝殿の天井に描かれた龍が、
(清水寺の)音羽の滝に水を飲みに行く、
と聞かされた記憶が蘇りました。
今や、恋愛色ばりばりの世俗的な神社ですが、
昔はそれはもう、ひっそりとしたところだったのです。










去年の夏に、
背筋氏の『近畿地方のある場所について』を読みまして。
手法が素晴らしく、身近であり、想像もしやすく、
いやこれマジでノンフィクションなんじゃ、
とかこう、本当に背筋が寒くなるお話で。
何度も本屋で購入しかけ、
しかし買ったら怖くて読み返せないのも分かっていたので、
買ってないですけどね。

今でも本屋でコーナー作られているし、
商業的にも成功している作品です。
映像化しそう、絶対。

こう、散らばって与えられた断片が集まって意味をなしていく快感と、
その裏にある悲しみと理不尽さへの気色悪さ。
人が生み出し、人が放置し、
人以上のものとして君臨する善悪を超えた存在への根本的恐怖。
自分勝手なのは神なのか人なのか。

普通、こういうホラー作品は一度読んでしまったら終わりなんです。
ああ、怖かった。
で、買った本すらほぼ読み返さない。
ところが。
この『近畿地方のある場所について』は、
折りに触れて、ふと思い返し、考えてしまうのです。
これってすごいことなんです。
読み捨てられて当然の、そういう物語の中に、
抜けない棘のような解析不可能な部分があって、
考察へと思考を誘われてしまう。
これはもう、物語として命を持ってしまったようなものです。


何故、こんなことを書きだしたかというと。
昨日うっかり、背筋氏の次作である
『穢れた聖地巡礼について』に関わる短篇を
読んでしまったのです。
本当に短くて、
でも誰の心の中にでもあるような、
そんなものを形にされてしまったような、
一言でいうなら、
「そっとしておいて欲しかったものを掘り返しやがって」
という気持ちに近いというか。

『近畿地方』については、ネタバレというか、
かなり大元の正体的なものは言及されるのですが、
(解明されてない怪異もある)
個人的には私はそうならない、そういう話でもあるのですが、
ホラーって、巻き込まれ事故もあるからね。


さて、私の好きな作家のひとりに加門七海がいて。
彼女もホラー中心に書いている人です。
そのひとつ、『祝山』が映像化されるらしい。
『祝山』はホラーとしての完成度が高い上に、
読後感がいいという、ホラーにしては珍しい話です。
今調べたら2007年に書かれた本だった。
もうそんなになるんだ。

この人の小説は。
大半が読み返せない。
だって、ラノベジャンルのはずなのに何度号泣させられたか。
『人丸調伏令』『晴明。』が特に。
私、主人公には幸せになって欲しいんだよ。

ちなみに、エッセイと怪しさ満載の考察は大好物です。
私が天海僧正に嵌ったのはこの人のせい。
怪しいは楽しい。


背筋氏に話を戻すと。
自然と2ちゃんねるの「洒落怖」を思い出します。
昔、ROM専だったけどちゃねらーやってたんで。
オカルト板の「洒落にならない怖いはなし」です。
掲示板は不特定多数の無記名の人間が集うので、
人が楽しんでいると現れる「荒らし」が本当にうっとおしくて。
それを除外してまとめてくれる「まとめブログ」は神でした。

聞いたことありません?
「お兄ちゃんどいて、そいつ殺せない」とか。
如月駅にイマジナリーフレンドの作り方とか、
そういった有名どころも多かったし、
半分以上ギャグな寺生まれのTさんものとか。
あと、本当に怖い話も沢山ありました。
その中に混じるほっこりした話が好物だったんですが。
玉石混交を楽しむ、そういう場でもありました。
都市伝説もこうやって生まれてくるんだろうな、とか。

背筋氏は、少なくとも洒落怖を読んでいるし、
もしかしたら書き込んでいたかもしれない。
そういう作者の近さも、
ホラーには相性がいいのかもしれません。
安全で暖かいところで読むホラーは。
ある意味とても贅沢な楽しみなのです。
……子供の頃からの怖がりに定評のある私なのに。
ちなみに。
読むより書く方が怖くないのはなんでだろうね!?




月別アーカイブ

2025

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2017

2016

2012

2011


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.