Nicotto Town


てらもっちの あれもっち、これもっち


時間という波の上で

夜明け前の薄い空気の中、

僕は一人でコーヒーを淹れる。

豆を挽く音が部屋を満たし、

それだけで、この朝は完成する。

時計の針が動く音が、

心臓の鼓動と重なる。

でも、それはいつだって少し遅れている。

いや、もしかしたら僕の方が早すぎるのかもしれない。

時間は波だ、と彼女が言ったことがある。

穏やかな波に身を任せるように生きろ、と。

でも、僕はどうしても泳ぎたくなる。

波に抗い、遠くの岸を目指したくなる。

この世界に流れる時間は、

誰にも公平だと言われるけれど、

本当は僕らそれぞれに違う。

それは、かつて愛した人たちの名前を

忘れる速さにも表れている。

時間は流れる。

だけど僕たちは、その中で

何を失い、何を拾い上げていくのだろう?

コーヒーが冷める頃、

僕は静かに波に戻る。

それが、今日を生きることだと知りながら。





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