【第9話】シン・ラジオ・ガール
- カテゴリ:自作小説
- 2024/10/01 20:34:57
まぁ俺って
そんなに褒められた人間じゃないさ。
でもね
地震に出くわして、気になる女の子が倒れたりしたら、そりゃ
火事場の馬鹿力
も出すってもので…
周囲の怒号。警報機の金切り声。
ざわつく雰囲気。
その中で、俺はただ「救急車を呼べ」と駅員に怒鳴り続けていたんだ。
夢中で、ソニーさんの容体だけが気がかりっての、自分以外の誰かのことだけしか考えていなかった時間…
おそらく初めての経験だったと思う。
ソニーさんは意識なく倒れていて、俺は彼女を抱き起こして
普段では考えられないくらい取り乱してたんだろうな…て今では思う。
そのあとの記憶は結構あいまいで。
気が付けば、救急病院のICU待合室の椅子に座って、頭抱えてた。
”あ、病院なんだ…”
そう思った時、やっと素に戻った。
処置室から若い女性の看護師さんが一人出てきた。手には紙をはさんだボードがあって。俺は立ち上がって走り、看護師さんに詰め寄った。
「彼女は?彼女は大丈夫なんですか?」
「あ…えっと、あなたは?」
「さっき運ばれた女の子の知人です。どうなんですか?」
そしたら、相手はふふっと小さく笑って
「大丈夫ですよ。脳震盪起こしてるだけです。傷の処置はしましたし、すぐ退院できますから」
「あ、そうですか… よかった…」
ホッとした表情の俺を見た看護師さん。
「あぁ、そうなのね…あなたは
あの子の恋人さん
だったんだ?」
え?
ちゃいますよ!
その言葉に、一気に固まった俺。
「心配よね… でも大丈夫だから安心してね。
でも羨ましいなぁ…こんなに心配してくれる彼氏がいたなんてね(笑)」
だからちゃいますってば(-_-;)
でも看護師さんは、微笑んでは他の患者さんのこともあるのか、パタパタ走り去っていったんだ。
あーーーーー!!! でも、よかった~~~~~!!
俺はそれだけ思って、椅子にへたりこんでしまった。
頭抱えて、なんでこんなことになったのかって考えたりする余裕も出てきたよ。
まさかラジオ番組のイベントでソニーさんと会えて、しかもそのあと会話までできて、そして地震なんてね…。
なーんで、ここまで心が痛むんだろう?
なーんで、彼女の症状が大丈夫だと聞いて涙出るくらいほっとしてるんだろう?
自分の気持ちに嘘はつけないって 初めてわかったような気がする
こんなのは、俺のキャラに合わないんだけど。
ポケットでスマホが振動する。
取り出してみれば、マッキーからのLINEだ。
”ヲイ、地震だったが大丈夫か?”
それだけ。メッセージにしては余りに短くね?
スカートなら短すぎるのは大歓迎だけど(笑)
”マッキーこそ大丈夫だった?俺は平気だよ”
そう返したらまた振動。今度は甲斐名都だ。
”先輩が貧乏ゆすりするから、こんなことになっちゃったじゃないですかー”
なんだこいつは… 意味不明…
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どれくらい時間がたったのか、ふと気づくと窓の外は薄暗くなっていて。
肩を叩かれて、現生に戻った。
「えっと あの方のお連れ様ですよね。もう大丈夫です。お帰りになって構いませんよ」
白衣姿のドクターが笑顔でそう告げてくれた。
「えっと…支払いは?」
「ああ、そうですね…明日以降でいいですから。 とりあえずお連れしますね」
ドクターが再びICUに入る。暫くしておでこにガーゼを貼ったソニーさんが、出てきたんだ。
「あ、パナさんごめんなさい。もう大丈夫だよ…」
ショックが大きいのか、弱々しく笑ってそう言っているのは、まさしくソニーさんだった。
「ソニーさんこそ大丈夫なの?だったらいいんだけどさ…」
「うん、大丈夫。今から家に帰ろうと思うんだけど。なんかお礼しなきゃね…」
えええっ
お礼なんていらねーよ!
ソニーさんが無事だったのならそれでいい。
ヘタレだな俺。
そんな簡単な事が言えないんだわ。
傍にいた若い看護師さんがくすっと笑う。
そりゃそうだよな。
俺たち
ソニーさん パナさん って
相手を呼び合ってたんだもんな。
(続く
心が痛む…何かに気が付いたのかも、この後の行動も気になります。
お互いにPNで呼び合う仲って…
きっと看護師さんも気になってそうw
入院はしなくても大丈夫だったんだ?命にかかわらなくて良かったですね☆
どうなるんだろう今後。。。???